【三島南】  「選抜吉報」 #三島南

創部100年初甲子園
21世紀枠でつかんだ切符

21世紀枠候補に選ばれていた三島南に選抜の「吉報」が届いた。創部100年を迎えたチームに「春」がやってきた。(取材・栗山司)

 

■100年分の思い  

創部100年を迎えた今年、ついに歴史の扉が開いた。

1月29日、高野連から持山育央校長に吉報が届いたのは午後3時32分。数分後、持山校長がグラウンドで待機するナインに「三島南高校の甲子園推薦をいただきました。おめでとう」と報告した。  伊藤侍玄主将(2年=内野手)は「甲子園では恥ずかしくないプレーができるように一生懸命に頑張ります。応援よろしくお願いします」と元気よく宣言。その後、稲木恵介監督は選手にこう語った。「1000人を超える子どもたちがみんなのプレーを楽しみにしている。そして100年の伝統を誇るOBたちの思いがやっと叶った。君たちが、甲子園の舞台でやれることはなにか。ただひたすらに100パーセントの力を出すこと以外はない。甲子園で100パーセントのプレーができるように頑張ろう」。 その後、歓喜に沸く中、部員全員で帽子を天高く空に飛ばし、初出場の喜びを表現した。

■野球振興活動が評価される  

静岡県勢としては初の21世紀枠での選抜出場。長年に渡って活動を続ける野球体験会や野球教室を通しての振興活動が高く評価された。  

始まりは2014年。地域の野球人口減少に危機感を抱いた稲木監督がアイディアを出し、同校野球部が近隣の保育園で野球体験会を実施した。以後、地道に規模を拡大。近年は小学生まで枠を広げた野球教室に加え、野球未体験の子ども向けに月1回のペースで体験会も開催。口コミで噂が広がり、これまで参加した人数は延べ1133人。

稲木監督は「野球の面白さや楽しさを子どもたちに実感してもらいたい」と口にする。

■足と頭を生かした野球で躍動する  

昨秋は東部大会3位で県大会へ。2回戦で甲子園出場経験のある浜名を4対2で下すと、準々決勝は名門・静岡を3対1で撃破。62年ぶりとなるベスト4進出を果たした。  

稲木監督は「地域の普通の子ばかり」というように、プロ注目の逸材がいるわけではない。いかにして、失点を最小限に食い止め、少ないチャンスをものにできるか。「甲子園では公立高らしく、足と頭を生かした野球がしたい」と伊藤主将。まず守備面でカギを握るのが植松麟之介(投手)と深瀬涼太(捕手)の1年生コンビだ。スルガボーイズ時代からバッテリーを組む二人。サイドスロー投手の植松を深瀬が巧みにリードする。攻撃面は足や小技を絡めた機動力が持ち味。相手のスキをついた頭脳的なプレーで得点を奪う。さらにオフ期間は「バットを振る力をつけよう」と打撃を強化。「秋よりも打線のボリュームが確実に上がっている」と稲木監督も手応えを掴んでいる。  

創部100周年で手にした甲子園。長年、待ちに待ったOB、そして1000人を超える地元の子どもたちの期待を背に、夢舞台で躍動する。

 

甲子園でホームランを打つ 前田銀治(2年=投手&外野手)

昨年、11月の健大高崎(群馬)との練習試合。第1打席、第2打席で連続本塁打を放った。秋の大会後、体重を増やしたことでパワーアップ。「甲子園では3本のホームランを打ちたい」と誓う。投げても、最速139キロをマークする速球派右腕。「1番をつけて投げたい」と1年生の植松麟之介とエースナンバーを争う。選抜出場が決定すると、「野球を始めてからの夢だったので、ものすごく嬉しかった」と涙を流した前田。

憧れの舞台はもうすぐだ。

 

三島南・稲木恵介監督
感謝の心を持って臨む

「100周年の節目の年に監督を務めさせていただけることに、ありがたみを感じている。感謝の心を持って、甲子園ではとにかく100パーセントの力を出し切る。そのことを徹底して行い、相手より1点多い野球をやっていければと思っている」
【監督プロフィール】1979年静岡県生まれ。沼津東-日本体育大。高校時代は外野手として活躍。大学卒業後、誠恵の部長を経験したのち、静岡大大学院に進学。相良の監督、富士宮東の部長を経て、2013年秋より現職。

 

 

 

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