【昭和一学園 野球部】  「坐薪懸胆(ざしんけんたん)」 #昭和一学園 

“ノムラの教え”を継承 耐え忍び、
思いをたぎらせ、夏へ向かう

近年、着実に力を付けている昭和第一学園。故・野村克也氏の教え子である田中善則監督が高校野球の舞台で作り上げるチームの“今”に迫った。(取材・三和直樹)

■惜敗の秋、チームの成長

昨秋、ブロック予選1回戦で杉並工に7対0の好発進も代表決定戦で、本戦ベスト8まで勝ち上がった八王子に1対3の惜敗。快速球左腕・羽田慎之介に対して「変化球を捨てて狙いはストレート1本」で勝負に挑んだが、あと一歩及ばず。「チャンスで1本出ていれば同点にできていたし、良い当たりがアウトになった場面もあった。良い展開には持っていったんですけどね」と田中監督。池田晴人(3年)、馬渡優太(3年)の好投手2人を擁し、若井春介主将(3年=内野手)を中心にチーム一丸となって攻め、そして守る。昨秋だけでなく、田中監督がチームを率いて以降、着実に力を伸ばし、たとえ敗れたとしても強豪校を相手に堂々と渡り合う試合を増やしている。

■受け継いだ“教え”を選手たちへ

2014年から同校で指導を続ける田中監督は、昨年2月に他界した野村克也氏のシダックス監督時代にコーチとして師事し、その“教え”を受け継いだ人物でもある。「野村監督の“教え”は、今の僕のすべてだと言っていい。『人間的成長なくして技術的進歩なし』という言葉は常に自分の中にある」。普段の練習から野村氏の教えを選手たちに伝え、コロナ禍での自粛が求められた今冬は、新聞紙面で連載されていた『ノムラのすべて』を切り抜いて作成した全180ページの自作ノートをプリントして配布。「選手である前に、まず人間としてどうか。野球を通じての人間作り。レギュラーになって甲子園を目指すだけじゃなく、仲間の大切さ、先輩後輩との関係、家族への感謝、物を大事にする気持ち。大好きな野球を通して多くのことを学んで、自分自身を磨いてもらいたい」と選手たちにメッセージを送る。

■自粛期間を乗り越えて

緊急事態宣言発出中は部活動休止。その間はZoomを使って連絡を取りながら個人練習に励んだ。練習再開後も時間が以前の半分。元々、校内のグラウンドは他部と共用で使用制限がある。「環境が整った強豪校に対して悔しいとか羨ましいという気持ちは正直、あると思う。でもそれを言っても仕方ない。自分たちで工夫してやっていくしかない。悔しいという気持ちを夏への原動力にしてもらいたい」と田中監督。新チーム発足時に決めたスローガンは、将来の成功や活躍のために苦労をいとわず、つらい生活を耐え忍ぶという意味の『坐薪懸胆』。そこに「先輩たちの仇を取る」という言葉も付け加えた。「野球ができることに感謝しながら、チーム全員で最後の夏に向かいたい」と若井主将。今は進化の過程。思いをたぎらせ、爆発の時を待っている。

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