【前橋育英】 優勝V #前橋育英

前橋育英が延長12回の激闘制す
上州高校野球の歴史に刻まれる名勝負

第103回全国高校野球選手権群馬大会決勝で前橋育英が6対1で健大高崎に勝利した。延長12回、前橋育英・岡田啓吾が決勝2ランを放つなど一挙5点を奪ってゲームを決めた。

■両エース、白熱の投手戦

永遠に観ていたくなるようなゲームだった。今大会ノーシードで臨んだ前橋育英と、今春の選抜大会出場のシード校健大高崎。近年の群馬の覇権を争う両軍の対戦は、予想に違わぬ好ゲームとなった。昨夏の独自大会準決勝は9対11、昨秋の秋季大会準々決勝は7対10。過去対戦2試合では前橋育英が打ち合いに屈していた。この決勝も得点の奪い合いが見込まれた中で、ゲームは前橋育英エース外丸東眞、健大高崎エース今仲泰一が投げ合う投手戦となった。4回までスコアレスで進んだ緊迫の試合は、5回に健大高崎・吉里竜門が押し込まれながらもセンター前に運んで先制に成功した。ゲームは健大高崎が1点リードのまま終盤へ。前橋育英は8回に、4番・皆川岳飛主将の執念の左前タイムリーで同点に追いつく。

■2年生クラッチヒッターの一撃

両エースのボールには、一球一球に魂がこもっていた。健大高崎の8回1死1・3塁の場面では、エース外丸が好捕からの投手ゴロダブルプレーで危機回避。1対1で勝負は9回へ突入していく。対する健大高崎・今仲は9回に147キロをマークするなど圧巻のピッチング。2死1・2塁のピンチをしのいで9回裏へ。9回裏2死からは育英主戦・外丸と、健大高崎の主砲・小澤周平が対峙し、力と力の勝負。結果的に四球となったが、互いの意地がぶつかり合うシーンは見応えがあった。試合は、1対1のスコアで延長戦へ突入していく。前橋育英はエースにゲームを託す一方で、健大高崎はエース今仲を交代させる継投策。延長戦は、どちらに得点が入ってもおかしくない一進一退の攻防が続く。勝負を決めたのは、延長12回表、前橋育英の2年生の一撃だった。

■群馬の決勝にふさわしい一戦

無死2塁で打席に立った岡田が、インコースの変化球を強振。鋭いスイングから放たれた強烈な打球は、ライトスタンドフェンスを越えていく。値千金の決勝2ラン。土壇場で2点を奪った前橋育英は、勢いもろともさらに3点を追加し、打者一巡の猛攻で一挙5点を奪ってゲームを決めた。エース外丸は延長12回を投げ抜き、被安打4失点1の快投。荒井直樹監督は「苦しい場面が続いたが、守備で我慢できたことが延長12回の攻撃につながった。昨秋、今春の悔しい敗戦を経て、選手たちは強くなった」と目を細めた。緊迫した展開が続くしびれるゲームは、高校野球王国・群馬の決勝にふさわしい、今大会のベストバウト。前橋育英、健大高崎の選手たちの激闘は、上州高校野球の歴史に刻まれる。

(2021年9月号掲載)

 

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