【文星芸大附】16年ぶり11回目優勝(2023年夏)
劇的サヨナラ勝利で作新学院を下す 文星芸大附が16年ぶりに王座奪還を成し遂げた。第105回全国高校野球選手権記念栃木大会決勝で、文星芸大附が作新学院を6対5のサヨナラ劇で下して栃木の頂点に立った。OB指揮官の高根澤力監督のもと地力をつけたチームは、決勝という大舞台で持てる力のすべてを発揮。9回に一度は同点に追いつかれたがサヨナラ本塁打で劇的な勝利を収めた。チームの総力を結集した執念の優勝だった。(取材・永島顕一)
劇的サヨナラ勝利で作新学院を下す 文星芸大附が16年ぶりに王座奪還を成し遂げた。第105回全国高校野球選手権記念栃木大会決勝で、文星芸大附が作新学院を6対5のサヨナラ劇で下して栃木の頂点に立った。OB指揮官の高根澤力監督のもと地力をつけたチームは、決勝という大舞台で持てる力のすべてを発揮。9回に一度は同点に追いつかれたがサヨナラ本塁打で劇的な勝利を収めた。チームの総力を結集した執念の優勝だった。(取材・永島顕一)
全6試合で大きく成長、初の夏甲子園へ 第105回全国高校野球選手権記念静岡大会決勝で、浜松開誠館が東海大静岡翔洋に12対8で勝利し初の夏甲子園出場を決めた。浜松開誠館は4回戦で浜松商、準々決勝で掛川西を完封し、準決勝では2017年夏優勝の藤枝明成を相手に粘りのサヨナラ勝ちを収めた。決勝戦・東海大静岡翔洋戦でもチーム一丸となった戦いで、夏の頂点へ駆け上がった。元プロの佐野心監督は就任7年目にして悲願の夏甲子園へ。静岡高校野球界に新たな歴史を刻んだ。(取材・栗山司)
県立球児の可能性を体現 伝統校が13年ぶりに甲子園へ返り咲き 伝統校・前橋商が第105回全国高校野球選手権記念群馬大会決勝戦で桐生第一に勝利して群馬の頂点に立った。準々決勝、決勝でミラクル逆転劇を演じたチームは13年ぶり6度目の甲子園出場を決めた。群馬は過去10年私学すう勢の時代が続いていたが、県立が覇権を奪い返した。選手、スタンドを含めて全員が主役の「全員野球」を体現したチームは、猛暑の大舞台で新たな歴史の1ページを刻んだ。
夏大会さながらの応援で一体感演出 メンバー外選手が「完全燃焼」 第105回全国高等学校野球選手権記念神奈川大会(7月7日開幕)を前に、神奈川強豪の横浜隼人と横浜商大高が6月29日、横浜スタジアムで「引退試合」を行った。 年ぶり横浜スタジアムでの引退試合 夏のメンバー入りを逃した選手たちが中心となって戦う引退試合は、両校伝統のゲーム。コロナ禍で過去2年は他会場で開催されたが、今夏は3年ぶりに横浜スタジアムで開催された。当日は午後5時プレイボール。スタンドにはレギュラー組の3年生や1・2年生が集結し、夏大会さながらの応援で試合のムードを盛り上げた。ゲームは横浜商大高が序盤から得点を重ねてリード。7回には、両軍がゆずの「栄光の架橋」を歌い上げた。横浜隼人は終盤に2点を返して意地をみせた。試合後には、両チームの選手たちが高校野球生活の健闘を称え合い、記念撮影。メンバー外の選手はこの試合が高校野球でのラストゲーム。試合後には涙を流して横浜スタジアムをあとにした。 【横浜隼人・水谷哲也監督】 「今年の3年生は結束が強く、自分たちで雰囲気を上げていける選手たち。引退試合によって選手たちがさらに一致団結してくれました。横浜隼人は『綱引き野球』。メンバーもメンバー外も、同じ横浜隼人の選手。横浜隼人のグラウンド、スタンドが一体となって“綱”を引くことで勝ち上がっていきたい」 【横浜商大高・八木澤辰巳監督】 「3年生はコロナ禍での高校入学でしたが、切磋琢磨しながら選手たち自身でチームを作り上げてきた学年です。この試合をもって引退になる選手もいますが、すべての力を発揮してくれたと思います。一生懸命に取り組んでくれたことがチームにとっての財産です」
投打充実、春大会ベスト16進出 2年連続で戦国・神奈川の夏シード獲得 春大会でベスト16進出を果たした市ケ尾が、2年連続の夏シードを獲得した。野球を本気で楽しみながら進化を遂げるチームは、新たな歴史をつくっていく。 ■力と自信を蓄えるチーム 近年の各大会で安定した戦いをみせる市ケ尾は、神奈川公立屈指の戦績を残す。昨春にベスト16進出を果たして夏シードを獲得し、ベスト32へ進出。昨夏のメンバーが多く残った今年のチームは、昨秋大会2回戦で相洋に敗れたが接戦を演じて力を示した。そして今春には2回戦で生田に勝利すると、3回戦では川和と対戦。2回までに4点を奪うと、堀川爽馬(3年)から木澤卓也(3年)の継投によって7対2で勝ちきり16強入り。2年連続で夏シードを獲得した。昨夏は一戦一戦勝ち上がって得たシード権だったというが、今年は狙って奪ったシード権という。 ■野球を本気で楽しみながら成長 チームを指揮するのは就任7年目を迎える菅澤悠監督だ。学校の雰囲気と選手の気質に合わせた指導を実践。市ケ尾の旗印のもとに集まっている選手は、3学年合わせて55人。チームは公立屈指の規模に成長し、グラウンドには活気があふれる。市ケ尾は、投手育成に定評があり、毎年、個性あふれるピッチャーが力を発揮。指揮官は、日々の練習試合から「連投40球」という球数制限を徹底。多くの投手に責任とチャンスを与えながら進化を促していく。菅澤監督は「やらされる練習よりも、自分でやる練習の方が選手は伸びていく。方向と方法を提示するだけで、あとは選手の自主性に任せています」と説く。野球が好きな選手たちは、野球を本気で楽しむことで著しい成長を遂げる。 ■投打のポテンシャルは史上最強 今年のチームは、攻守に堅実なプレーをみせる松本大馳主将(3年=内野手)が背中で引っ張る。右サイドの本格派・木澤卓也(3年)とコーナーワークが特長の堀川爽馬(3年)のダブルエースは、私学相手に真っ向勝負できる力を備える。守備では、松本主将と杉山英志朗(2年)の二遊間が軽快なグラブさばきでダブルプレーを次々と完成させていく。打撃は1番・高槻琉聖(3年=外野手)がスイッチ役となり、杉田周一郎(3年=内野手)、主砲・犬丸宗祐(2年=内野手)らにつないでいく。投打のポテンシャルは、市ケ尾史上最強。チームの目標は「ベスト16に勝つ」。シードクラスに勝つという目標だが、自分たちに勝つという意味も含まれる。松本主将は「ベンチ、スタンドのメンバーが一体となって完全燃焼したい」と力を込める。力と自信を蓄えるチームは士気高く、夏の舞台へ向かっていく。(7月7日現在)
スカイブルーのチャレンジ 2021年夏ベスト8進出の公立実力校 2021年夏にベスト8へ進出した実績を持つ横浜清陵。投打のバランスが整うチームは、一体感を武器に虎視眈々と番狂わせを狙っている。 ■秋、春ともに私学に惜敗 今年の3年生は、昨夏大会でプレーした選手が多く残る経験値の高いチームだ。丸山聖悟主将(3年=内野手)らは昨夏も主軸としてプレーしたが、初戦敗退。選手たちは、夏の悔しさを糧にすると共に、個人ではなくチームとして戦うことを徹底、年間を通じて切磋琢磨してきた。昨秋は2回戦で横浜商大に勝利し手応えをつかんだが、続く3回戦で三浦学苑に完敗。再起をかけた今春は、16強をかけた3回戦で横浜創学館に1対4で惜敗した。「惜しい試合ではなく、勝つ試合がしたかった」(丸山主将)。敗れはしたが、今年のチームはベスト16に匹敵する力を持つ。 ■切磋琢磨できる選手たち 投打のバランスは上々だ。投手陣は、右サイドスローの西村駿佑(3年)を軸に、サウスポー苅谷大斗(3年=外野手兼任)、井川智博(3年)らがマウンドに立つ。西村は「全員でゲームをつくって、助け合いながら戦っていきたい」と夏へ向かう。打撃陣は、永原功富(3年=中堅手)、苅谷らがシャープなスイングをみせていく。主砲は不在だが、全員でつないで得点につなげていく。投打のキーマン苅谷が「投打でチームを助けるプレーをみせたい」と話せば、永原は「自分のテーマは『勝負師』。夏はチャンスで打てるバッターになりたいと思う」と気持ちを込める。野原慎太郎監督は「今年の3年生たちは昨夏の経験に加えて、素直にアドバイスを聞ける、“心”のある選手たちが多い。努力してきたことをすべて出し切って、大会中も成長していってほしい」と選手に寄り添う。 ■すべてはチームの勝利のため 横浜清陵は、大会メンバー登録締め切り直前まで学年の枠を超えた競争が続いた。チームではメンバー選考の材料として、選手間アンケートを実施した。当初、3年生内では「3年生中心」のムードもあったというが、選手ミーティングで金野壮哉(3年=外野手)が「3年生だから、という理由で選ばれるのは嫌。チームが勝つための選択をしよう」と投げかけた。当落線上だった金野の言葉によって、チームの覚悟は決まった。選手たちはチームの勝利のための名前を記し、その結果を参考にして指導者たちが判断をくだした。丸山主将は「去年の夏を経験した選手が多いが、最終学年としての夏はみんなが初めて。メンバー、スタンド一体となって戦っていく」と話す。スカイブルーのユニホームに袖を通す選手たちは、仲間への感謝を忘れずに戦い抜く。仲間たちと過ごした時間が、一番の財産だ。(7月7日現在)
丸山聖悟 主将 (3年=一塁手) 縦と横のつながりが武器 「今年の横浜清陵は、選手同士の仲が良くて、縦と横のつながりが武器になっています。この1年間、みんなで協力しながら努力してきました。投手力には自信があるので守備からリズムをつくって攻撃へつなげていきたいと思います。このチームは全員で作り上げてきたチーム。絆はどのチームにも負けないと思っています。」
市ケ尾・菅澤悠監督 ベンチメンバーが役割を理解 「2年連続夏シードを獲得することができましたが、選手の頑張りがすべてです。今年の3年生は、昨夏から試合に出ている選手が多いですが、彼ら以外のベンチメンバーが役割を理解してチームを盛り上げてくれています。その一体感がチームの土台になっています」 監督プロフィール 1987年神奈川県生まれ。荏田-中央大。中央大時代に社会人の横浜金港クラブでプレーし母校の学生監督も務めた。筑波大で体育教師の免許を取り、磯子、向の岡工業を経て市ケ尾赴任、2017年春から監督。
エース/福田京佳 (3年) 130キロ弱のストレートとチェンジアップを巧みに操るサウスポーエース。投球術に優れ、牽制テクニックも抜群だ 主砲/梅澤蒼空 (3年=三塁手) パワーとスピードあふれる強打者。もともとは捕手だったが今春からはサードへコンバート。打撃に集中できることで迫力が増した 主将の チーム分析 玉城巧望
横浜清陵・野原慎太郎監督 選手たちの成長を見守りたい 「選手たちは、この1年で大きく成長しました。ただ、生徒たちは成長の過程。大会中も成長してくれると感じています。私の指導歴でも、大会で成長できるチームは結果がついてくることが多かった。選手たちが成長していく姿を、1試合でも多く見守っていきたいと思います。そして、次のステージにつながってくれればと考えています」 監督プロフィール 1982年神奈川県生まれ。東海大相模−横浜国大。大学卒業後に神奈川県教員。岸根、大師で指導したのちの2020年4月に横浜清陵に着任し8月から監督。
Wエース 木澤卓也 (3年) 最速133キロのストレートで強気に勝負する右サイド主戦。球速以上に威力あるボールで仕留めていく 堀川爽馬 (3年) 最速130キロのストレートとスライダーを駆使してゲームをつくる制球派。イン、アウトを使い分けてアウトを重ねていく pick up
夏だ!祭りだ!翔陵だ!! 50年ぶりの甲子園へ 秋ベスト8、春ベスト16の藤沢翔陵。チームにとっては、クライマックスとなる夏がいよいよやってくる。 ■接戦を勝ち切るDNA装備 夏に強さを発揮するチームだ。2021年夏にはベスト4へ進出、昨夏にも5回戦で桐光学園に競り勝ちベスト8へ勝ち上がっている。ゲーム終盤にみせる一気呵成の攻撃は圧巻。接戦を勝ち切るDNAは、日々の練習によって養われている。今年のチームは、昨夏の主軸6選手が残る世代だった。しかし、秋の準々決勝では横浜創学館に対して何もできないままに1対9で完敗。チームはゼロからの出直しを図った。川俣浩明監督「昨夏の結果は先輩たちの力。その結果に、あぐらをかいてしまったら先がない。昨夏の結果はアドバンテージと考えるのではなく、もう一度ゼロからやらなければいけない」と説く。自分たちの立ち位置を理解した選手たちは、冬に心技体を鍛えて春、夏への準備を進めた。 ■チームワークと気迫で勝負 チームを指揮する川俣監督は、藤沢商(現藤沢翔陵)出身の熱血漢。ロッテ、阪神でのプロ経験を活かした的確な指導で、選手たちを鍛え上げていく。川俣監督と選手たちの情熱によって、藤沢翔陵はいくつもの夏のミラクル劇を演出してきた。勢いに乗ったときの迫力は神奈川随一。スタンド一体となった戦いがチームの矜持だ。川俣監督は「藤沢翔陵は、技術に加えてチームワークと気迫で勝負するチーム。どんな相手でも粘り強く守っていけば勝機は巡ってくる。神奈川は夏祭り。一人でも多くの選手たちにお祭り男になってほしい」とエールを送る。 ■『和力』を武器に甲子園へ チームの軸となるのは、昨夏からプレーする攻守の要・玉城巧望主将(3年=内野手)。昨夏に横浜の主将を務めた玉城陽希(現日体大)の弟だ。エースとしてマウンドに上がるサウスポー福田京佳(3年)は、コーナーワークと投球術に長けた神奈川屈指の技巧派。さらに打撃は、主砲・梅澤蒼空(3年=内野手)、勝呂勇哉(3年=捕手)、菊地優太(3年=外野手)が勝負強さを発揮する。春は4回戦で、藤嶺藤沢に1対3で惜敗。選手たちは、あの悔しさを糧に夏へ乗り込む。玉城主将は「チームスローガンである『和力』を武器に、一戦一戦、勝ち上がって甲子園へ行く。翔陵魂をみせていきたい」と力を込める。藤沢翔陵の「夏祭り」が始まろうとしている。(7月7日現在)
国学院栃木・柄目直人監督 一隅を照らす 「昨夏は甲子園という非日常を経験することができて、その経験がチームの日常を変えてくれました。大事にしている言葉は『一隅を照らす』。片隅や自分自身を含めてチーム全体を照らすことで、グラウンドだけではなく社会で活躍できる人材を育てていきたいと思います」 監督プロフィール 1982年栃木県生まれ。国学院栃木−筑波大。高校時代の2000年選抜に、一番中堅手で出場。2005年から国学院栃木コーチ、2010年に監督就任。2018年春選抜出場、2022年夏甲子園出場。 エース/盛永智也 (3年) 2年生だった昨夏に栃木大会制覇、甲子園ベスト16に貢献したエース。最速144キロのストレートと鋭いスライダーが武器。U18日本代表候補
春季関東制覇、8年ぶりの夏甲子園へ 夏は特別な戦い。敵は己にあり 健大高崎(群馬)が春季関東大会で関東強豪を次々と撃破して5年ぶり3度目の優勝を果たした。2015年夏以来、8年ぶりの夏甲子園を狙う青栁博文監督に聞いた。 《関東強豪を撃破して初頂点》 健大高崎は今夏の群馬県大会決勝で明和県央に勝利して関東大会出場を果たした。関東大会では、エース小玉湧斗(3年)を欠く戦いとなったが1年生の石垣元気、佐藤龍月の好投によって関東強豪に競り勝っていった。準々決勝では帝京、準決勝では専大松戸、決勝戦では木更津総合に勝利して関東の頂点に立った。過去11年で3度の春関東制覇となっている。チームは今春の選抜大会に出場するなど2017年から4度の選抜出場を成し遂げている。しかしながら、夏の甲子園は2015年以来、遠ざかっている。前橋育英というライバルに行く手を阻まれているのだ。この夏はどう戦うのか。 ―春季関東大会制覇の要因は? 「小玉がいない中で、新戦力の1年生ピッチャーがしっかりと投げてくれた。野手も、小技、走塁、長打などいろんなことができて、戦術のバリエーションが多かった。冬に取り組んできたことを、関東強豪相手に発揮することができた。チームにとっては大きな自信につながった」 ―石垣元気、佐藤龍月の1年生が好投した。
秋・春は不完全燃焼の名門 満を持して迎える夏、甲子園出場を誓う 故障による離脱に苦しんでいた今季の静岡。万全の体制が整わないまま秋、春を乗り越えてきた。そして今、ようやくベストメンバーが揃い、最後の夏を迎える。(取材・栗山司) ■甲子園で勝つことが使命 春夏通算43回の甲子園出場を誇る静岡。ネット裏には明治、大正、昭和、平成、令和と連なる歴代部員の名が記され、昨年に新設された同じくネット裏のボードには輝かしい全国大会出場記録が掲示されている。あらゆる場所で伝統の重みを感じることができるのが静岡のグラウンドだ。 初代から数えて3年生が140期にあたる本年度は苦しい1年となった。秋、春ともに県準々決勝止まり。チームの柱が故障で離脱したことが響いた。エース候補の齋藤童獅(3年)が昨年春に右膝の靭帯を損傷。12月から投球を再開したが、右ヒジの痛みで春の大会も未登板に終わった。 また内野の要の松永将大(3年)も故障で離脱。欠けたピースを埋めることに苦労した。 それでも甲子園で勝つことが名門の使命。冬場は苦しい練習を全員で乗り越えてきた。主将の遠藤碧真は(3年=捕手)はこう話す。「冬は何をするにも甲子園のレベルで物事を考えようということで、常に自分たちは甲子園、甲子園って口に出して練習してきました」 甲子園のレベルを基準にして、そこに達しているのか、達していないのか。チームで物差しを作って取り組んできた。 ■ベストメンバーで臨む夏
エース 吉川慧(3年) 安定感抜群のサウスポー。春の東海大会準決勝で139キロを計測したストレートに加え、カーブ、チェンジアップの変化球の精度も高い。バックに安心感を与える計算のできる投手だ。 Pick up/両投げのスラッガー 北條創太(2年=外野手) 春の東海大会決勝戦。5番打者の北條は3安打を放って勝利に貢献した。「気持ちの面でも技術の面でも冬にやってきたことが出せた」と大会を振り返る。中学1年時に右ヒジを手術。そこから約1年半、投げる・打つはもちろん、膝の軟骨をヒジに移植した関係で走ることもできない日々が続いた。「ちょっとでも野球に触れていたかった」と始めたのが左で投げること。本来は右投げだが、左利きの投手として練習を重ねた。高校では野手に専念。外野手として守る際は右で投げる。また、練習試合で投手として起用されると右手にグローブをはめて左で投げる。「ピッチャーはそんなに…」と謙遜するものの、秋からの新チームではマウンドに上がることも期待される本物の二刀流だ。 主将の チーム分析・太田侑希 主将 (3年=外野手)
3年生の皆さん、お疲れ様でした! 春季県・東海制覇で今夏優勝候補筆頭に コロナ禍の無念を晴らす夏へ一途に進む 今春季大会初優勝、さらに東海制覇を達成した加藤学園。勝利への意識は高まり続けている。(取材・栗山司) ■あと一歩で逃したセンバツ 県初優勝、東海大会を制覇しても全く驕ることはない。第1シードの加藤学園はさらなる高みを見据えて夏の大会に突入した。 現チームのターニングポイントとなったのが昨秋の東海大会だ。準決勝で常葉大菊川に0対2で敗れ、選抜大会出場を逃した。 自分たちに足りなかったものは何か―。冬場はもう一度、原点に立ち返り、全力疾走やキャッチボールの基本から見直していった。「メンバー、メンバー外に関係なく、加藤学園という一つの集団として、冬を乗り越えることができた」と太田侑希主将は胸を張る。 接戦で競り負けない逞しい精神力を身につけて春の頂点に登りつめた。 ■主体性のある集団へ
3年生の皆さん、お疲れ様でした! 新生・育英、王座奪還へ限界突破 野球ノートと映像解析のハイブリッド 2016年から2021年まで5大会連続で群馬の頂点に立った前橋育英。昨夏は準々決勝で樹徳に屈して連覇が途絶えた。王座奪還を狙うチームは「覚悟」を決めて夏へ挑む。 ■勝利のために限界を超える 昨夏、連覇が止まった。大会6連覇を狙ったチームは準々決勝で樹徳と対戦。相手投手の前に打線が得点できず、勢いに飲み込まれる形で0対6のスコアで敗れた。夏の群馬大会では実に6年ぶりの敗戦となった。幾多のミラクル劇を演じて頂点に立ってきたチームだったが、6連覇を果たすことはできなかった。夏大会後に始動したチームは、小田島泰成主将(3年=内野手)、石川太陽(3年=内野手)ら前チームからのレギュラーが中心となり始動。選手同士で決めた今年のチームスローガンは『覚悟〜Over the limit to win』。小田島主将は「前チームから試合に出させてもらって勝利に貢献することができなかった。先輩たちのためにも覚悟を持って臨んでいきたい」と夏へ照準を合わせた。
健大高崎・青栁博文監督 主体的に動けるチームだ 「主将・森田をはじめ昨年から試合に出ている選手が引っ張ってくれて、主体的に動けるチームになっている。そして各自が役割を果たす良い組織になっていると感じている。春の関東大会で優勝したが、夏はまったく別の大会。先を見ずに一戦一戦、戦っていくことが大切だ」 監督プロフィール 1972年群馬県生まれ。前橋商−東北福祉大。大学卒業後、一般企業に就職し軟式野球でプレー。健大高崎共学化に伴い、2002年に野球部監督就任。創部10年目の2011年夏、甲子園初出場を果たすと、春夏計7度の甲子園出場。チームスローガンは「不如人和」(ふにょじんわ)。戦術スローガンは「機動破壊」。
3年生の皆さん、お疲れ様でした! 第1シード、8年ぶりの甲子園へ戦力充実 主将・森田を軸に投打のバランス整う 健大高崎は今春の選抜大会に出場し、春関東大会を制覇した。第1シードで群馬大会へ臨むチームは、8年ぶりの夏甲子園を目指して一戦必勝で戦っていく。 ■史上最強の投手陣 今夏の群馬大会の優勝候補筆頭だ。昨秋の県大会で優勝し秋関東ベスト4で選抜甲子園へ出場。さらに春県大会を制すと関東大会でも列強を相手に堂々たる戦いをみせて頂点に立ってみせた。驚くべきは、絶対エース小玉湧斗(3年)が関東大会メンバーから離脱、代役として2人の1年生投手・石垣元気、佐藤龍月が急遽エントリーされたが、両投手が好投をみせて勝ち上がった。エース不在で関東を制した健大高崎は、夏大会ではエース小玉が背番号1で復帰登録。左腕・加藤達哉(3年)、右腕・多田結祐(3年)も安定、健大高崎史上最強の投手陣で王座奪還を狙う。 ■夏へ熾烈なメンバー争い 春大会以降、熾烈なメンバー争いが展開され、チームはさらに進化した。石垣、佐藤龍の1年生2選手が関東大会で結果を残したため、夏登録20人の枠は激しい競争となった。エース小玉、森田光希主将(3年=内野手)、半田真太郎(3年=内野手)、増渕晟聖(3年生=外野手)のセンターラインは昨夏からプレー。彼らの経験値がチームの基盤となる。青栁博文監督は「夏は3年生の思いがプレーにつながる。力が同じであれば3年生を使っていく」と方針を示唆。大会20人中3年生は15人。部訓である「不如人和(ふにょじんわ)」の言葉のもと部員101人の団結力で勝負していく。半田は「夏は7年間も甲子園へ行っていない。春の選抜では初戦で報徳学園に負けて悔しい思いをした。この夏にもう一度、甲子園へ行く」と力を込める。 ■新しい歴史をつくっていく 2020年の独自大会を含めると夏は、3年連続決勝戦で涙をのんでいる。2021年夏は、最強打線を武器に大会へ乗り込んだが決勝で前橋育英に1対6で屈した。昨夏は準決勝で利根商に勝利して決勝へ進出。再び甲子園まで“あと1勝”に迫ったが、ダークホース樹徳の勢いを止めることができずに4対6で惜敗となった。選手たちは、先輩たちの思いを背負って大舞台へ向かう。チームスローガンは「頂点奪取」。森田主将は「これまでの結果を“清算”して、自分たちの代で新しい歴史をつくっていく。このメンバーで1日でも長く野球ができるように一戦必勝で戦っていく」と話す。健大高崎は今夏、閉ざされた扉を開けて、新たな時代へ突き進む。
「最近の大会は私学強豪に敗れているが、互角以上に戦えているし、勝つチャンスは十分にある。あとは勝負所でピッチャーを中心とした守備で耐えて、好機で一本が打てるかどうか。今年の選手たちが、これまで越えられなかった壁を突き破ってくれることを信じている」 【監督プロフィール】1974年群馬県生まれ。前橋商-東京国際大。大学卒業後、前橋商、高崎商コーチを経て高崎商監督。高崎商で2006、2009年に選抜出場。2012年4月から母校・前橋商監督。2015年夏4強、2019年夏準優勝、2020年秋準優勝。
Pick up 齋藤隼(3年=中堅手) 外野へ強い打球を打ち込んでいく攻撃的な2番バッター。高校通算11本塁打 金子蒼生(3年=一塁手) スピードあふれるリードオフマンで、広角に打球を打ち分けて出塁していく 投手陣 清水大暉(2年)/ 坂部羽汰(3年) / 須田湧貴(3年)
10人で臨んだ今春大会で価値ある「県1勝」 連合から単独チームへ“復活”し一歩ずつ成長 2021年秋、2022年春に連合チームでのエントリーとなった相原。“情熱”と“環境”が整うチームは昨夏から再び単独チームで大会参加。今春は県大会1勝を挙げるなど進化を示している。 ■勝利の価値を知る選手たち 勝利の喜び、勝利の価値を知る選手たちだ。相原は2020年夏に単独で出場して12年ぶりの夏1勝を挙げた。しかし、その秋には1・2年生の部員が6人となり、連合チームに加わる形で2021年秋、2022年春の大会にエントリーした。2022年春は、相原の選手を中心にしながら「相原・津久井・橋本・厚木清南・愛川・中央農業」の6校連合で春予選に臨むと、学校の枠を超えて一体となった戦いをみせて予選を突破してみせた。春大会後に新入部員を加えたチームは2022年夏に単独チームへ復活した。一般的に一度連合チーム参加になると単独復帰が難しいケースが多いが、相原はチーム活動を維持し、そこから単独チームでのエントリーが続く。選手、指導者の情熱がチームをよみがえらせた。 ■春は歴史的な「県1勝」 新入生が加わる前の戦いとなった今春は選手10人での戦いとなった。予選は、相原、厚木西、秦野総合の3チームブロック。相原は、厚木西には3対7で敗れたものの、秦野総合戦に4対1で勝利。ブロック2位で、麻布大附との代表決定戦に参戦。県大会出場をかけたゲームは実力拮抗の好ゲームとなった中で、相原が5対4のサヨナラ勝ちを収めて、県大会出場権をつかみ取った。チームの進撃は、まだ止まらなかった。勢いに乗ったチームは、県大会1回戦・橘学苑に8対3で勝利し、20年以上ぶりの春県大会勝利となった。那須野恭昂監督は「このチームは、連合から単独復帰、そして県勝利と一歩ずつ成長してきた。苦労をしてきた分、勝つ喜びは、ほかのチーム以上のものがあるかもしれない」と選手に寄り添う。 ■みんなで作ってきたチーム 今年のチームは、春大会後に7人の1年生が加わり、マネージャー2人を含めて17人となった。夏ベスト16を狙う相原は、重原然主将(3年)と佐藤光希(3年)の両サウスポーが軸になりゲームを作っていく。打撃陣は、177センチ103キロの左の大砲・鈴木海生(3年=内野手)が迫力の打球を飛ばせば、ルーキーの関根颯斗(1年=外野手・投手)も力を発揮。夏に向けて投打の戦力は整いつつある。重原主将は「みんなでチームを作ってきたので、思い入れも強いし、その分、勝ったときの喜びも大きい。応援されるチームになって夏ベスト16の目標を達成したい」と力を込める。17人の部員が集まった相原は野球ができる喜びを表現しながら、みんなの力で伝統をつないでいく。
攻守に力強い戦いをみせる地域伝統校 全力疾走プラス気持ち&気迫で甲子園へ 攻守に力強い戦いをみせる伝統校・栃木工の今年のスローガンは「全力疾走プラス気持ち&気迫」。夏大会を控えて士気上がるチームは、悲願の甲子園を狙って夏のトーナメントへ挑む。 ■私学相手に真っ向勝負の心意気 伝統校・栃木工が虎視眈々と甲子園を狙っている。選手の情熱によって毎年確かな力をつけるチームは2019年春の準々決勝で作新学院、準決勝で国学院栃木を撃破して準優勝となった。同年秋の台風浸水被害や2020年春からのコロナ禍などの試練を乗り越えると、2022年春には準々決勝で文星芸大附に勝利してベスト4へ進出した。同年夏には3回戦で国学院栃木に1対2で惜敗、同年秋には準々決勝で青藍泰斗に屈した。勝ち上がることはできなかったが、私学相手に真っ向勝負。その経験は、今季のチームに継承されている。 ■タイプの違う投手陣が軸 シードで臨んだ今春は4回戦で茂木に5対9で敗れる結果となった。春大会直前に、チーム内にインフルエンザが広がったことに加えて負傷者が出たことで万全ではなかったが、言い訳をすることなく4回戦敗戦を受け止めている。春大会後にはエース左腕・塚原翔貴(3年)を軸に、大野真聖(3年)、石川芭龍(3年)の投手陣の整備が進み、安定してゲームを作ることができるようになった。2022年春の準決勝で作新学院相手に好投した左腕・塚原は「テンポ良いピッチングでチームにリズムを生み出した。投手陣みんなの力で勝ち切っていく」と夏へ向かう。 ■夏直前、迫力を増す打線 打線もじわじわと迫力が増してきた。クリーンアップは松本蓮斗(2年=外野手)、髙久大地(2年=内野手)、柴優斗主将(3年=内野手)。レギュラーの半数を2年生が占める若いチームだが、3年生がチームを牽引し一体感が生まれている。攻守の要となるのは2番・本澤大和(3年=外野手)だ。俊足巧打のクラッチヒッターで、センターの守備範囲は県屈指。チームのアクセントとなる本澤は「どんな相手でも自信を持って戦っていく。私学を倒して甲子園へ行きたい」と静かな闘志を燃やす。チームのスローガンは「全力疾走プラス気持ち&気迫」。全力疾走を遂行することに加えて、気持ち、気迫を前面に出して戦っていく。柴主将は「全員の力を一つにして全力で甲子園へ向かっていく」と夏を見据える。選手たちの気迫が、甲子園へのチケットを手繰り寄せていく。
昨夏の栃木大会で旋風起こして準優勝 打撃破壊で目指す18年ぶりの夏甲子園 春夏通算7度甲子園出場を誇る伝統校・宇都宮南。昨夏に大旋風を起こし準優勝となったチームは、今年も栃木大会のダークホースとなる。 ■昨夏は大逆転劇で準優勝 昨夏の快進撃が今も脳裏にはっきりと浮かんでくる。伝統校・宇都宮南は準々決勝・青藍泰斗戦では初回に一挙6点を奪う猛攻をみせるとそのまま逃げ切って10対7で勝利してベスト4へ進出。準決勝・佐野日大では5回表までに2対5とリードを許したが、5回裏に4点を奪って逆転すると、6回裏にも一挙6点を加えて私学強豪を12対5の7回コールドで寄り切った。甲子園まであと1勝。期待は高まったが、決勝・国学院栃木戦ではゲーム序盤に3対2とリードしながらも中盤に追いつかれ、最後はじわじわと点差を離されて4対8で惜敗。殊勲の準優勝で夏を終えた。 ■投打のポテンシャルが開花 今年の宇都宮南は、先輩たちの好結果を受けて始動した。塩濱颯人主将(3年=内野手)を軸とする選手たちは、先輩たちが共有していた「打倒私立」のスローガンを継続し、その先にある甲子園を目指して新たなスタートを切った。昨秋は3回戦で文星芸大附に2対9で敗戦、今春は3回戦で国学院栃木に0対10で敗れた。「打倒私立」を掲げながらも秋・春ともに私学強豪に完敗という結果になった。塩濱主将は「春に国学院栃木に負けて、ムードは一度下がってしまったが、夏へ向けてみんなで切り替えていった」と振り返る。チームは春大会を終えて、投打のポテンシャルが開花。夏へ向けて上昇気流をつかんでいる。 ■戦える形ができつつある 今年のチームは、高校通算14本塁打の塩濱主将を筆頭に、クラッチヒッター杉山煌(3年=内野手)・岡田明徒(3年=外野手)、パワーヒッター山越恵作(3年=捕手)らタイプの違うバッターが打線を彩る。投手陣は、最速135キロの小さなエース池田悠希(3年)、緩急を活かしたピッチングをみせる技巧派左腕・添野匡吾(3年)の継投でゲームを組み立てていく。投打の軸が整ってきたことで、チームの歯車がかみ合い出している。勢いに乗ったときの打線は本物。スイッチが入ればどんな相手でも一気に畳み掛ける力を秘める。宇都宮南は、さわやかに、そして勇猛に甲子園へ突き進む。