【片倉  野球部】「自然体」 #片倉

秋1回戦敗退の悔しさを糧に
“ワクワク野球”で再び勝ち上がる

公立の雄として2010年以降にベスト16以上8回、2012年夏にはベスト4入りを果たした都立片倉。64歳の誕生日を目前にした宮本秀樹監督の“総決算”のチームは、笑顔にあふれていた。(取材・三和直樹)

■リベンジへ向けて絆を強める

不完全燃焼が続いた。都立の強豪として知られているが、2019年秋以降の大会は早期敗退が続き、宮本監督が「面白いチーム」と期待していた昨夏も3回戦で敗退した。さらに新チームとなり、夏休み期間中に練習試合を20試合近く実施した中で「いい戦いができていたし、勝率もかなり高かった」(宮本監督)と手応えを感じていたが、迎えた秋大会はブロック予選突破後の1回戦で駒場学園に5対8の逆転負け。公式戦独特の緊張感の中で「硬さがあった。自分たちの力をぜんぜん出せなかった」と4番の佐藤奏斗(2年=外野手)。主将の麻野凜空(2年=内野手)も「夏の調子のまま行けるかと思っていたんですけど、そう甘くはなかった」と唇を噛みながら振り返る。

だが、この“負け”がチームを強くした。敗戦の直後、さらに翌日のミーティングで「ダメージは大きかったですけど、なぜ負けたのか、何が足りなかったのかを全員で話し合った」と麻野主将。さらに「このチームは自分たちで考えて、自分たちで行動できる。負けた悔しさを糧にして、チームがさらに一つになれたと思います」と続ける。率直に意見をぶつけ合い、チーム全員が認め合い、リベンジへの思いを強くした。

■投打ともに高い潜在能力を持つ

戦力的にも楽しみな面々が揃う。運動能力が高く、チームメイトのからの信頼も厚い麻野がリードオフマンとして塁上をかき回し、鋭いスイングで強烈な打球を飛ばす4番・佐藤が打線の軸になる。「爆発力はどのチームにも引けを取らない」と佐藤。1年生の湯地詠斗、藤井亜郎も加わり、どこからでも得点を奪える切れ目のない攻撃を展開する。問題は「爆発しなかった時にどうするか」だが、その課題克服へ向け、足や小技を駆使。攻撃のバリエーションを増やしている。

さらに投手陣では、高い潜在能力を持つ右腕・ジョンソン・マーカス太一(2年)が伸び盛り。秋は腰痛を抱えていた左腕・高岡大(2年)はロングリリーフが可能で、藤田遥大(2年)、時崎空汰(2年)も控える。今冬、投打ともにレベルアップを遂げ、その力を今度こそ本番で発揮することができれば、強豪私立を相手にも堂々と渡り合える。

■目の前の一球に

「このチームは技術的に高いものがあるし、何より明るい。いつもいい雰囲気の中で練習できている」と宮本監督。「こちらが無理して何かを言わなくても、自分たちで上手くなろうといろいろ考えて、自然と『ワクワク野球』ができている」と目を細める。 「もっと貪欲に、ガムシャラになって戦いたい」と佐藤。「先のことを考えたり、見たりするんじゃなくて、目の前の一球に集中して戦いたい。淡々と普段通りのプレーを続けることができれば、自然と相手に隙が生まれる」とは麻野主将。

チャンスをいかにものにするか。自分たちが持っている力を本番の舞台でいかに発揮するか。その答えを、片倉ナインは知っている。自然体の構えの中で、爆発の機会を虎視眈々と窺っている。

 

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