創部14年目で初県大会&ベスト8
本気で目指す甲子園
科学技術が創部14年目の昨年秋に初の県大会出場を決め、ベスト8まで進出した。21世紀枠静岡県候補に選出されたチームは、自覚と自信を胸に本気で甲子園を目指す。(取材・栗山司)
■2021年秋の大躍進
2008年に静岡工と清水工が統合して生まれた科学技術。この秋、エースの兵庫悠真(2年)を中心に無駄な点を与えることなく、少ないチャンスで効果的に得点を挙げて勝ち上がった。創部14年目にして初の県大会出場を決めると、3連勝してベスト8入り。準々決勝では名門・静岡に敗れはしたものの大躍進を遂げた秋となった。就任4年目の森田重成監督は「正直、ここまで行くとは想像していなかったが、『上手くなるためにこうしたい』という思いが強い2年生が多い」と嬉しそうな表情を浮かべる。
原点は2回戦で負けた夏の大会だ。失策絡みでの敗戦。新チームが結成されると、すぐに主将の杉本大慶(2年=内野手)が中心となり、「なんで負けたのか」を分析し、「やることを徹底していこう」と誓いあった。
具体的には守備でのミスを無くそうと、キャッチボールから見直していった。上手くいかないときは杉本がナインを集め、「もっとこうしよう」と注意事項を確認し、意識付けしていった。
■基礎練習を大切にする
臨時コーチとして指導を受けた川相昌弘さん(今季より巨人ファーム総監督)の影響も強い。「バントの神様」でもあり、ゴールデングラブ賞6度獲得の達人の金言を大切にした。「川相さんからキャッチボールの大切さを教えてもらいました。足を動かして、グローブの芯で捕ることなど、基本的なことですけど、プロでやってきた方の声なので僕たちに響きました」(杉本主将)
環境面は決して恵まれているとは言えない。グラウンドはサッカー部とラグビー部と共用。しかも住宅地に囲まれているため、大きな声を張り上げることができない。練習時間も限られている。毎日7時間授業のため、練習スタートは午後4時45分。完全下校は午後8時と定められ、わずか2時間足らずで切り上げる。それでも選手たちはこの状況をデメリットと感じていない。杉本は「こういう環境だから、基礎練習を大切にできるんです」と胸を張る。
■夏の甲子園を目指して
取材日の練習は全選手が内野に入り、ボール回しから始まった。ミスがなくなるまで何度でもやり直していく。その後は全体でのスイング練習を経て、各自の自主練習に入った。短い練習の中でも、必ずこの時間は取っているという。「自分で考えて工夫することで身につく」と森田監督。杉本は「自分に何が足りないのか、課題点を意識してやっています」と話す。
11月には施設面、時間的な制約を受ける練習環境でありながら秋の好成績が評価され、21世紀枠の静岡県候補校に選出された。惜しくも最終選考に残ることはできなかったが、新たな歴史の一歩を刻んだ。
科学技術の次なる目標は夏の甲子園。杉本主将が力強く宣言する。「夏は自分たちの実力でいきます」