高校野球の「原点回帰」
伝統進学校の愚直な挑戦
昨年の秋季栃木県大会では、1回戦を勝利したものの、2回戦では自分たちの持ち味を発揮できぬまま敗れた。その試合で実感させられた課題、そして悔しさをバネに、22人の部員が一丸となって1924(大正13)年以来遠ざかっている甲子園の舞台を目指す。(取材・永島一顕)
(2021年2月号掲載)
■人としての育成のための練習
2020年夏、新型コロナ禍により甲子園大会が中止となり、結果を求める目標がなくなった先輩の3年生。それでも練習を続ける先輩の姿は、「人としての育成のために練習しているんだ」と岸耕大主将(2年=内野手)の目には映った。「周りの方々の協力があって野球ができている」ことも再確認。3年生の練習姿勢からは、「一日一日大切に過ごさなくてはいけない」という思いがしっかり伝わってきた。
一方、篠崎淳監督は「(甲子園という)目標に向かって必死に挑む姿を見られなかったので、(気持ちの面での)財産が蓄えられなかった」と、各校が共通することではあろうが、例年とは違った状態で秋季大会に臨むこととなった新チームに対して不安を抱えていた。
■収穫と課題の秋季大会
「上を見すぎず一戦必勝の思いで」(岸主将)と迎えた秋季大会。初戦では、この大会で背番号1を背負った大須賀結輝(2年=投手)が安定した投球を見せて完投。打線も効果的なタイムリーが出て小山北桜に5対1で快勝、新チーム初の公式戦を見事に飾った。
しかし、那須清峰との2回戦では思うような試合運びに持ち込めない。ミスから序盤で主導権を握られビハインドの展開。終盤に追い上げを見せたものの4対6で敗退。
「心技ともに力がなかった」(岸主将)と自分たちの甘さを痛感させられてしまう。オフシーズンにどう取り組んでいくのか、チームとしてやらなくてはいけない課題を選手一人ひとりが実感し、選抜につながる秋季大会は終わった。
■球春に向けて各選手が切磋琢磨
オフシーズンの今、宇都宮のグラウンドでは2年生12、1年生10の22人が無駄なく動き、球春に向けて熱心に練習する。
篠崎監督が「チームの一番のカギだが、まだ背番号1は確定できない」とする2年生の3投手は、アドバイスしあいながらライバル心も抱き切磋琢磨。「上・下位打線のムラなく、粘りの打撃を身につけてほしい」との篠崎監督の思いに応えようと、選手一人ひとりが工夫しながら打力向上に努めている。そんな彼らの姿に「とにかく一生懸命に練習している。野球に取り組む姿勢は高校野球の手本」と指揮官。気持ちを一つにしてオフシーズンを過ごしている宇都宮の選手たち。球春を迎えた時には、大きく成長した姿を見せてくれるはずだ。