【浜松商】「真心野球」

再び甲子園の土を踏むために日々努力
選手主体のスタイルで新しい伝統を作る  

昨秋から戸塚和也監督が指揮をとる古豪・浜松商。甲子園という目標は今も昔も変わらない。(取材・栗山司)

■復活を託された新指揮官  

春8回、夏9回の甲子園出場を誇る浜松商。1978年春には全国優勝を果たし、静岡県の高校野球界をリードしてきた伝統校だ。  しかし、2000年夏を最後に聖地から遠ざかり、近年は県の上位に顔を出すことも減った。  再建を託されたのは戸塚和也監督だ。現役時代は専修大で主将。その後教員となり、静岡商の副部長、春野の監督、袋井商の監督を歴任した。浜松商には2022年4月に赴任。秋から監督を務めている。  新指揮官が最初に選手に伝えたのは「真心を込めて野球をやろう」という言葉だった。「片付け一つとっても、真心を込めてやってほしい。何をやるにもそこが大事だと思った」  最初の公式戦となった昨秋の西部地区大会は初戦敗退。今春も県大会出場を逃したが、少しずつ「戸塚イズム」が浸透してきている。グラウンド内は常に全力疾走し、1球をひたむきに追いかけていく。練習は活気に溢れている。  また、「社会で通用するような人間に育ってほしい」という戸塚監督の願いから、日々のゴミ拾いも始めている。

■1球にこだわる姿勢を大切に  

古き良き、厳しさを追求していく一方で、時代に合わせた変化も。選手が主体となるチームを目指しているのも特徴だ。  「監督と選手が一体となってチームを作り上げることを目標にしています」。そう話すのは鈴木奏楽主将(3年=捕手)。「具体的にはプレーしている中で思っていることを選手内で話し合って、それを監督さんに伝えて、意見を噛み合わせて方向性を決めています」  その中で春から夏にかけて「1球へのこだわり」を大切にしてきた。取材日の練習では塁間のボール回しに時間をかけていた。誰か一人でもミスしたら最初からやり直し。緊張感の中で完成するまで続けていく。「1球のミスでこれまで負けていますので。夏に向けて、もう一度、こだわってやっています」と鈴木主将は厳しい表情を浮かべる。

■粘り強く戦って甲子園へ  

チームは1年間で心身ともに逞しくなった。精神面に加え、冬場にウエイトトレーニングを行って体つきが一回り大きくなった。さらに今年は武器がある。1番打者の鈴木裕太(3年=内野手)を筆頭に俊足の選手が多く、機動力で相手を崩すことができる。  春まで不安のあった投手陣は複数で補う。エース候補の中村龍紀(3年)、制球力のいい松井武蔵(3年)、長身から球威のあるストレートを投げる佐藤翔生(3年)、経験豊富の森耀大(3年)に加え、故障からの復帰が近い鈴木秀汰(3年)も控える。  迫る夏に向けて戦力を整えるチームは虎視眈々と頂点を狙う。鈴木主将は「粘り勝つ野球で甲子園だけを狙っています」と力強く宣言。生まれ変わった浜松商がノーシードから台風の目となる。

 

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