昨夏悔し涙を流したエースが大きく成長
最後まで諦めない粘りの野球が今夏花開く

昨夏、9回裏に逆転サヨナラ本塁打を打ち込まれるというまさかの初戦敗退を味わった駿河総合。1年間抱いてきた悔しい思いを晴らす時がやってきた。(取材・栗山司)

■あの悔し涙から1年

創立12年目の駿河総合。望月俊治監督のもと、短期間で急速に力をつけ、2019年夏に県準優勝。杉山一樹(福岡ソフトバンク)、紅林弘太郎(オリックス)のプロ野球選手も輩出するなど育成力にも定評のあるチームだ。
 しかし、昨夏は初戦で姿を消した。まさかの幕切れだった。リードして迎えた9回裏に逆転サヨナラ本塁打を許した。マウンドに立っていたのは当時2年生の出井空大(3年)だった。
 先発した出井は初回に1点を許したものの、2回から8回は無失点に抑えていた。「途中から疲れが出て、だんだん制球が甘くなっていました。打たれた球はスライダー。完全にバッターに張られていました」。試合後は悔しさで涙が止まらず、大会後、数日間は負けたシーンが夢にまで出てきたという。
 もう同じような経験はしたくない―。この1年間で9回を投げ切るスタミナを養いつつ、制球を磨いてきた。この春の県大会は全3試合で完投。「去年に比べたら確実に成長しています」と胸を張り、最後の夏に突入した。

■粘り強いチームへ

出井の頑張りに野手も応える。昨秋は県1勝を目標に新チームがスタート。最終的には県ベスト8入りを果たした。さらなる高みを目指し、冬は打撃を強化してきた。全体練習とは別に、個々で毎日300から500スイングを敢行。春になると安打数が増え、大会では打ち勝つ試合もあった。
 ただ打つだけではなく、粘り強さも育んだ。2ストライクまで追い込まれるとノーステップに変えたり、バットを短くしたりと、チームとして徹底してきた。
 取り組みが実ったのが春の県大会2回戦(対沼津東)。9回が終わって同点でタイブレークに突入した。10回表に2点を奪うも、その裏に2点を失う我慢比べに。迎えた12回に4点を挙げて試合を決めた。栁原武侍主将(3年=内野手)は「どっちに転ぶか分からない試合でしたが、最後まで粘り強く戦ったことが勝ちにつながったと思います」と振り返る。

■初の聖地へ突き進む

続く3回戦で静岡商戦に敗れたが、ベスト16入りで夏のシード校入りを果たした。栁原主将は力強くこう話す。「今年のチームは技術がないところからのスタートでしたが、練習を重ねる中で少しずつチームが一つになりました。夏は甲子園を目指して戦っていきます」
 全員で束になって相手に立ち向かう。初の聖地が手の届くところまでやってきた。

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