
春の進撃で甲子園への気持ち高まる
粘り強い戦いで頂点を目指す
堅実な守備を軸にした試合運びが持ち味の浜松商。春は強豪を抑えてベスト8入りし、自信を携えながらも丁寧な練習を重ねてきた。2000年以来の甲子園を見据え、夏を迎える。(取材・栗山司)
■細部までこだわる
全国優勝を含む春夏通算17度の甲子園出場を誇る名門。昨年、創部100周年を迎えた。指揮をとるのは、就任4年目を迎える戸塚和也監督だ。専修大では主将を務め、その後、前任の袋井商でチームを強化した実績を持つ。「やることをやらないと勝てるチームにならない。それだけを徹底して言っています」。細部までこだわるのが戸塚流。「何事にも真剣に、真心を込めよう」と、最初のダッシュから最後のグラウンド整備まで集中することを求めている。
さらに今年は「甲子園基準」というテーマが加わった。甲子園で戦うために、どのレベルに達すればいいのか。そこに近づくための練習を積み重ねてきた。浅井琉晟主将(3年=捕手)も、「甲子園を目指そうという雰囲気が出て、この春から自分たちから率先して動けるようになってきました」と語る。
■春は強豪を破ってベスト8入り
今春は快進撃を見せた。県予選で聖隷クリストファー相手にサヨナラ勝ちを飾ると、県大会では静岡を下してベスト8に進出した。立役者になったのは昨秋まで二塁手だったエースの山口祐誠(3年)だ。球速は120キロ台前半だが、それを補って余りある抜群の制球力に加え、フィールディングにも長ける。ハイライトとなったのは静岡との3回戦。4回に1点を許したが、5回の1死満塁のピンチを防いでから波に乗った。ツーシームを交えて打者に的を絞らせず、7安打1失点で完投を飾った。バックの守りも堅い。冬の期間は、走りながら捕球する練習を繰り返すことでレベルを上げてきた。また攻撃面では、確実に走者を進め、機動力を生かして得点につなげていく。春はそんな目指すべきスタイルを確立して強豪校を破った。浅井主将は「自分たちが強くなったという自信が持てるようになった」と表情を明るくした。
■校歌が聖地で流れる日を信じて
2000年夏以来の聖地へ。春から夏にかけては、暑さ対策に加え、プレーの精度を高めるべく、さらに細かさを追求する練習に取り組んだ。取材日は実戦形式の中でバントを繰り返し、戸塚監督が丁寧にアドバイスを送っていた。「しんどい場面でいかに手を抜かず、最後までやり切ることができるか。それが勝負の命運を左右するのではないでしょうか」。
思い出されるシーンがある。昨年の夏は初戦で清流館と対戦。9回表を終えて5点のリードを許していたが、その裏に6点を奪って大逆転勝利。往年の粘り強い浜松商が戻ってきたと印象づけた。戸塚監督はこの粘りを日々の練習の賜物だという。
浜松商の校歌が甲子園で流れる日を信じて、選手たちはひたむきに白球を追いかける。