12年ぶり初戦突破からの快進撃に沸いた夏
「思考力」を養いながらさらなる高みを目指す
限られた練習環境ながら、今夏は快進撃をみせて学校と地域を盛り上げた御殿場南。本気の挑戦は、まだ始まったばかりだ。(取材・栗山司)
■目標は創部初のベスト8
今夏は49年ぶりとなる4回戦進出を果たした。12年ぶりの初戦突破で波に乗ると、2回戦と3回戦は1点差をものにして勝ち上がった。野球部の快進撃に学校全体も盛り上がった。3回戦は4時間授業を2時間に短縮し、前日に応援団長が全校放送で「球場に足を運んで下さい」と呼びかけ、約200人の生徒がスタンドを埋めた。「今までも責任と覚悟があると言ってきたが、あの夏を経験して行動も変わってきたと思う」と就任6年目を迎える諏訪部尚紀監督は嬉しそうに語る。 文武両道を掲げる校風を持ち、練習時間は限られている。7限目まで授業がある日の練習スタートは17時。約2時間しか練習時間を確保できない日もある。使用できるスペースも、内野と外野の一部に限られる。また、冬場はグラウンドが凍ってしまったり、雪が積もったりすることもあるという。そんなハンディを乗り越え、目標は創部初の県ベスト8に定めている。
■思考力で強豪チームと渡り合う
チームが大切にしているのは「思考力」。その一環として、木曜日は「ボトムアップデー」と題し、練習メニューを鈴木海里主将(2年=外野手)が中心となり、選手だけで決めている。「自分たちで決めるので、本当にやりたいことができると思います。自由度が広いので考えることも多いです」(鈴木主将)。取材日は木曜日。選手が考えたテーマは逆方向に強く打ち返すことだった。直近の練習試合で安打が少なく、その課題をクリアしようとこの日は全員が右打ちの練習をこなしていた。 またリーダー制を導入している。部員1人につき1つ。内野リーダー、グラウンド整備リーダー、体重管理リーダー…。マネージャーを含めた16人が何らかのリーダーとなり、チームに貢献する。これも、思考力を高めることにつながっている。
■秋は初戦敗退も手ごたえ
前チームのレギュラーから、今チームで残ったのは鈴木主将のみ。新チームは経験不足を心配されたが、秋の大会は富士市立相手に接戦に持ち込んだ。4対7で敗戦も諏訪部監督は「選手たちの可能性を感じた」と想像以上の手ごたえを掴んだ。一方で鈴木主将は「後半に守備のミスから逆転されてしまって。集中力と粘り強さが足りなかった」と唇を噛む。 今年度のスローガンは「力闘向上」。力の限り、努力を重ねて自らを前進させる。そんな思いが込められている。秋の悔しさをバネに、オフシーズンに近づくにつれ粘り強く戦えるチームに成長してきた。「選手たちは必死についてきてくれている。夏は面白い勝負ができるようにしたい」と話す諏訪部監督が見つめる先でナインは楽しそうに練習に打ち込む。 御南らしく、思考力で勝つ。最大の武器を生かし、歴史を塗り替えた先輩を超えてみせる。