2010年秋8強、2021年夏16強の実力校
「勝利の先」にあるものをつかみ取る

麻溝台が夏に向けて力を蓄えている。秋、春に満足できる結果をつかめなかったチームは、一枚岩で夏の勝利をつかみにいく。

■2021年夏に横浜商大、日大に勝利

今年のチームは、エース荒井快飛(3年)、土屋洸太朗主将(3年=捕手)のバッテリーなど、昨夏からプレーするレギュラー6人がそのまま残りベースが継承された。麻溝台は2010年秋にベスト8、2021年夏には横浜商大、日大に勝利してベスト16へ進出した実績を持つが、今季のチームは過去を超えていくポテンシャルを秘めていた。しかし、昨秋は2回戦で湘南学院に屈し、春は1回戦で橘に競り勝ったが2回戦で川崎総合科学に敗れた。対戦相手の力関係から判断すれば決して悪い結果ではないが、選手たちの表情には悔しさがにじむ。土屋主将は「期待してもらっていた中で勝ち上がれなかった。自分たちの力不足を感じた」と振り返る

■3年生全員が夏のメンバー入り

飛躍の準備は整っている。エース荒井、土屋主将のバッテリーを軸に、富岡煌陽(3年=遊撃手)、野本優(3年=外野手)らがセンターラインを形成し守備からリズムを作っていく。チームスローガンは「邁進」。目的に向かってチーム全員で困難を乗り越えていく。今年の3年生は19人。春大会前には3年生全員が夏メンバーに入れるか分からなかったが、春大会後に3年生たちが団結。それぞれが練習試合などで底力を発揮して、最終的には全19人が登録された。阿川弘之監督は初夏の全体練習後に、3年生だけの特別練習を実行して覚悟を求めた。指揮官は「春が終わって3年生が一枚岩になってきたことでチームとして地力がついてきた」と評す。エース荒井は「ゲームで守備のミスが出ても、それをカバーする投球で勝利に貢献したい」と勝利のためにマウンドに立つ。

■高校野球の勝者とは?

夏大会直前、阿川監督が選手たちに「麻溝台野球部に入って良かったか」と問いかけると、多くの選手がうなずいたという。阿川監督は「夏大会前までの2年半で成長できたのであれば、その時点で選手たちは『高校野球の勝者』。夏大会は結果を恐れることなく、堂々と戦ってほしい」と大会へ送り出す。そして、それぞれが抱えている「不安」や、試合での「目標」をオンラインで集計して、それを共有することで最後の夏へ向かっていく。麻溝台での2年半をやりきった選手たちは、すでに“勝利”を勝ち取っている。その意味では夏大会は、エキシビションゲーム。選手たちが大舞台で野球を楽しみ、思い切りプレーするだけ。選手たちは勝利に先にある「戦果」をつかみ取る。麻溝台の夏が、始まる。

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