ノーシードから戦い抜いた堂々の準優勝
仲間を信じ、気持ちを込めて戦うことで勝利をもぎ取る

第106回高校野球選手権静岡大会の準優勝は、ノーシードから勝ち上がった聖隷クリストファーだった。(取材・栗山司) 

■準決勝で劇的勝利

 ノーシードからの快進撃だった。
 初戦で島田商との注目カードを制し、4回戦では常葉大菊川を撃破した。さらに、準々決勝では最速152キロ右腕の小船翼(知徳)を攻略。試合を重ねるごとにチームは成長していった。
 ハイライトは準決勝の静岡戦。1点ビハインドで迎えた9回表だった。「失敗を怖がらずにいきなさい」の上村敏正監督の言葉に選手が応える。先頭のジャコブソン・レイ(3年=外野手)が中堅前安打で反撃の口火を切ると、代打の杉尾琉成(3年=内野手)の送りバントで1死二塁とする。このチャンスに稲岡輝太(3年=内野手)が左翼オーバーを放って同点、伊藤玲泉(3年=外野手)も「気持ちで打った」と右翼オーバーで続いて逆転に成功した。
 エース右腕の袴田行紀(3年)の力投も光った。4回以降、走者を許しながらも、粘り強く投げ抜く。9回裏は3人で抑えると、右手でガッツポーズを作って喜びを表現した。「自分一人では打ちとることができないと思っていたので、周りを信頼して打たせて取るという気持ちで投げていました。必ず仲間が打ってくれると信じていました」。

■夢は後輩に引き継がれる

決勝戦は初回に稲岡のタイムリーで先制。3回には渡部哉斗(2年=内野手)の同点打で食らいつくも、2対7で敗退。上村監督は泣きじゃくる選手にこう声をかけた。「思い通りにならないことが多いけれど、本当に頑張ってくれた。勝てなかったのは、私が君たちの力を出せなかったから」
 野球は力が全てではない。頭とハートを使う野球で勝てることを証明した堂々の準優勝だった。井上侑主将(3年=捕手)は「来年はまたここに戻ってきて、次は勝って金メダルをかけて上村先生を甲子園に連れていってほしい」と後輩に夢を託した。  
 

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