西東京で2度決勝進出の元祖「都立の星」
秋3年ぶり都大会出場、6年ぶり勝利

西東京大会で2度の準優勝を誇る伝統都立・東大和。昨秋は部員減少によって選手12人での戦いを強いられた。だが困難を乗り越えたチームには再び活気が戻ってきた。復活を期すチームには、新たな風が吹き込んでいる。

■伝統の灯は消えない

元祖「都立の星」だ。1978年、1985年の西東京大会で決勝へ進出し甲子園まで“あと1勝”に迫った東大和。当時の佐藤道輔監督が記した著書「甲子園の心を求めて」は公立指導者の“バイブル”となり、「全員野球」「心の中の“甲子園”を目指す」などの“教え”は都立指揮官に継承されている。多くの部員が巣立っていったチームだが、コロナ禍などの影響で部員が減少。3年生が引退した一昨年の秋は1・2年生合わせて選手10人、昨秋は選手12人での戦いとなった。単独チーム出場ぎりぎりの状況だったが、グラウンドの熱量は、かつてと変わらなかった。情熱がたぎる限り、伝統の灯は消えない。

■「野球部で待っています」の手紙

チームを率いる三國力監督は、秋留台、小平南、東村山西監督を経て2022年4月に東大和に着任した。部員が減っていたことには戸惑いがあったが、やるべきことは変わらない。選手たちの個性を引き出して、チームの力に変えていった。伝統校を任された責任は軽くはない。だが、少ない人数でも3年生を中心に選手が頑張ってくれたことが何よりも“励み”になった。「野球部で待っています」。指揮官はこの3年間、春先に新入生の野球経験者全員へ手紙をしたためていた。今春には12人の1年生を迎え、2年生9人を加えるとチームは20人となった。三國監督は「(野球部を守っていくのは)このチームを任せてもらった指導者としてのミッションです。いまの生徒たちは東大和が強かった時代を知らない世代。伝統を継承しながら時代に合わせてチームをアップデートしていく。選手と一緒に“令和の東大和”を創っていきたい」と話す。昨年度までは紅白戦ができなかったが、今春からは実戦練習が可能となった。復活の準備は整い始めている。

■団結力武器に遥かなる甲子園へ

今夏は初戦の2回戦で実力校・工学院大附と対戦し奮闘したものの3対7で屈した。新チームの選手たちは夏の舞台を経験したプレーヤーが多く、経験値の高さが特長。今年9月には1年生の野球経験者一人が途中入部し仲間が増えた。チームの中心は、文武両道を貫く西村琢磨主将(2年=外野手)と、攻守の要・山田穂陽副将(2年=内野手)、喜瀬隆也副将(2年=外野手)。大型ショートストップ山田は攻守に高い能力を秘める都立屈指のプレーヤーだ。エース忌部柊哉(2年=投手)は、右打者の胸元を突くクロスファイヤーが特徴のサウスポー。攻守の戦力が整うチームは今秋3年ぶりに都大会に出場し、6年ぶりの秋1勝を挙げた。西村主将は「自分たちの武器は団結力。全員野球で甲子園を目指す」と力を込める。“昭和の東大和”から“令和の東大和”へ。選手たちは、新たな時代の扉を開けていく。

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