「昭和100年」で野球の原点を改めて追求
打倒・全私学で切り開く「選手たちの未来」

私学強豪相手に真っ向勝負を挑む県立伝統校・ 栃木工。昨秋県大会でも佐野日大に惜敗し頂点への道を断たれている。士気高まる選手たちは、貪欲に勝利を求める「ド根性野球」を実践していく。

■野球技術よりも大切なモノ

栃木工練習グラウンドのベンチには、今季のチームが目指す姿を言語化したスローガン「ド根性野球」の文字が掲げてあった。その横には「何事にも積極的に立ち向かおうとする強い気持ちの野球」という説明が加えてあった。指導歴35年のベテラン日向野久男監督は「今年は昭和元号で数えれば『昭和100年』なんですよ」と生徒たちを見つめる。YouTube動画で打撃論を学んでも実際に打つには練習が必要。デジタル技術が進み、AIなどの発展により利便性は増したが、簡単に手に入れられるモノに価値は乏しいという。「平成から令和へ移ってきましたが、野球も人生も、やっぱり最後は努力と根性だと感じています」。指揮官はデジタルネイティブと呼ばれる生徒たちに野球技術よりも大切なモノを伝えようとしている。

■“やれ”でやるより“やる!”でやれ

栃木工は昨秋県大会3回戦で佐野日大(7対8)と対戦した。白熱のゲームは3対3で延長タイブレークへ突入。10回表に5点を奪われたものの、その裏に4点を奪い返して相手を追い詰めた。佐野日大はそのままトーナメントを駆け上がり秋の頂点に立った。2019年春に作新学院、国学院栃木に競り勝ち準優勝となったチームは昨今、私学相手に勝ちきれないゲームが続く。昨夏は3回戦で国学院栃木と対戦し5対6で涙をのんだ。山岸大惺主将(3年=内野手)は「良い試合をしながらもあと一歩で勝つことができていない。私立に勝つにはどうすればいいかを日々の練習から考えています」と話す。選手たちのキーワードは「“やれ”でやるより“やる!”でやれ」。自分たちの意志が求められている。

■充実「食トレ」でパワーアップ

 今年のチームは、投打のバランスが整っている。投手陣は、抜群の安定感を誇る岩木聡志(3年)、最速138キロの石川桜空(3年)、元ロッテ成瀬善久(現・BC栃木)の甥・成瀬琉葵らタイプの違うピッチャーがしのぎを削る。打撃は、185センチのスラッガー宍戸那瑠(3年=内野手)、パンチ力と勝負強さを備える厚木桂吾(3年=内野手)が得点に絡む。キーマン山田鉄平(3年)は投打の二刀流でチームを牽引する。守備では二塁手・須藤星来(3年)、捕手・永田琉惺(3年)が堅実なプレーでセンターラインを支える。昨秋の佐野日大戦で本塁打を放った宍戸は「勝負所の長打で勝利に貢献したい」と気持ちを高める。選手たちは練習後に米2合を食べる「食トレ」を実行。私学に負けない体を作り上げた。今夏、栃木工は「ド根性野球」を追求して私学強豪の壁を突破していく。

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