
2023年に悲願の甲子園初出場
情熱全開で狙う2度目の聖地
共栄学園は2023年に東東京大会を制して悲願の甲子園初出場を果たした。野球小僧たちが集まる下町のチームは、自然体で2度目の聖地を狙っていく。
■甲子園アルプス世代の選手たち
共栄学園は乱戦となった2023年の東東京大会準決勝で岩倉、決勝戦で東亜学園に逆転勝利して甲子園初出場を決めた。どんな状況になってもあきらめない、その戦いぶりは「ミラクル共栄」と呼ばれた。今年の3年生は、入学直後の夏に先輩たちの勇姿を脳裏に焼き付けた世代。灼熱のアルプススタンドから甲子園初陣を見守った。日頃の練習の先に、甲子園があるということを知ったことが大きな財産。あれから2年。3年生になった選手たちは、心技体のトレーニングを積んで、最後の夏を迎えようとしている。1年生当時に唯一甲子園ベンチ入りを果たしたエース首藤健介は「甲子園でメンバー入りした自分の経験を伝えていきたいと思う」と準備を進める。
■選手育成のマネジメント
共栄学園の校舎は葛飾区。女子バレーの名門で、2003年の共学化によって野球部が誕生した。敷地内には野球練習場が確保できないため野球部は週2〜3回、学校から自転車で20分ほどの場所にある江戸川河川敷で白球を追う。甲子園初出場を果たした2023シーズンからは、学校でのフィジカルトレーニングを重視。学校食堂の協力も得て、身体強化にも励んだ。原田健輔監督は「学校練習でしっかりと体を作って、グラウンドでは実戦練習。週末の練習試合で力を試していく。そのサイクルが確立できたことが大きい」と話す。いまの練習環境のメリットを最大限に活かすマネジメントによってチーム、選手は進化を遂げている。
■一球に集中、もう一度聖地へ
今季のチームは、突出した力を持つプレーヤーはいないが、攻守のバランスの整った集団。昨秋は準々決勝で帝京に延長タイブレークで2対3の惜敗、今春は4回戦で東海大菅生と対戦して粘りの戦いをみせたが4対5で屈した。春は打撃陣に“日替わりヒーロー”が出現したのに加えて、2番手の竹内彩翔(2年)が3回戦・東京成徳大高、4回戦・東海大菅生戦で好投するなど冬トレの成果が随所に見られた。チームの雰囲気は、2023年夏に近づいている。今年のチームスローガンは「一球同心」。全員が一球に集中し、思いをつないでいくことを意味する。河原颯汰主将(3年=内野手)は「みんなの力を合わせてもう一度甲子園に行きたい」とひたむきにボールを追う。共栄学園は、甲子園以後も変わらぬ姿勢で愚直に練習に励み、情熱を注ぐ。ミラクルは起きるものではなく、起こすもの。選手たちは、再び神宮でミラクルを起こす。