春夏通算12度の甲子園出場
秋交流戦敗戦を糧に立ち上がる
春夏通算12度の甲子園出場を誇る名門・文星芸大附。2007年夏を最後に聖地から遠ざかるチームは、15年ぶりの甲子園を目指して今秋に始動した。
■未来は自分たちで変えられる
まさかの結果だった。
秋季大会のシードを決める交流戦。文星芸大附は初戦の2回戦で、栃木工を9対2で下して決勝へ駒を進めた。シードを懸けた決勝の相手は、県北の伝統校・大田原。文星芸大附は序盤からリズムをつかめずに、0対5と劣勢のままゲームは終盤に入った。しかし、8回に打線が奮起し一挙5得点。スコアを振り出しに戻した。主導権を奪い返したはずだったが、その後の逆転のチャンスを逸すると、最終回に失点して5対6でサヨナラ負けとなってしまった。コロナ禍での今秋交流戦では、県内私立が次々と敗れる波乱の展開となったが、文星芸大附も敗戦を喫してしまった。吉田翔主将(2年=外野手)は「ゲームの入りから気持ちに甘さがあった。それが最後の結果につながってしまった」と敗戦を受け止めた。過去は変えられないが、未来は変えられる。名門は、交流戦敗退を糧に這い上がっていく。
■新チームはゼロからのスタート
文星芸大附は、今夏の栃木大会でベスト4へ進出した。準決勝の佐野日大戦では9回まで3対2とリードしていたが、最終回に2失点して3対4で敗れ、甲子園への道が閉ざされた。高根澤力監督は「勝ったと思った瞬間に、やられてしまう。選手たちは、野球の難しさを知ったはずだ」と夏を振り返る。前チームは3年生中心で、レギュラーは1年生セカンドの曽我雄斗のみ。新チームは、ゼロからのスタートになった。チームは、吉田主将を軸に、大山颯一朗(2年=外野手)、攻守の要・高橋経(2年=内野手)、曽我ら力のある選手がセンターラインを形成。投手陣は、エース入江奏(2年)をはじめ、大岩駿之介(2年)、松枝圭吾(2年)ら可能性を秘めた選手がブルペンでしのぎを削る。エース入江が「投手陣でゲームを作って、打線へつなげていきたい」と話せば、主砲・大山は「勝負所で確実に奪い切るチームになっていきたい」と気持ちを込める。
一球の怖さ、野球の難しさを知るチームは、2021―2022シーズンでの再起を誓う。
■勝つための集団へ変貌
文星芸大附は、旧校名の宇都宮学園時代から破壊力ある打撃で打ち勝ってきたチーム。チームの伝統と全盛期を知る高根澤監督は、当然、打撃のチームを理想としているが、今は我慢のときと捉えて、バント、盗塁、エンドランなどの技術向上に時間を割く。指揮官は「力がないチームが勝つためにはどうするかを考えなければいけない。打てないのであれば、少ないヒットで得点につなげられるように工夫していく。夏の最終形をイメージして練習を積んでいく」と話す。打撃力は今後の伸びしろが大きいため、早い段階で小技を習得することで、より効果的な攻撃ができるのは確実。人間万事塞翁が馬。今秋の交流戦決勝の敗戦がチームにとってプラスになる。いや、プラスにしなければいけない。チームは理想を追求しながら、勝つための集団へ変貌を遂げる。吉田主将は「最後は、パワフルかつ圧倒的な勝利をみせたい」と見据える。
文星芸大附がこの1年間でどんなチームに進化するか。進化の先に、復活が見えてくる。