【啓明学園 野球部 】「結果を恐れず、人間力を磨く」#啓明学園

元プロの監督の下で
「常に明るく」プレーした男たち

2015年4月に就任した芦沢真矢監督の下、着実な成長を遂げてきた啓明学園。彼らが戦う姿は、実に清々しいものだった。(取材・三和直樹)

■定着したチームの色

常に明るく、前向きに。口で言うのは簡単だが、それを全員で体現してきた。「試合を観に来てくれた人が、啓明学園の野球は“元気で明るい”から“楽しい”と言ってくれて、応援してくれる。それがこのチームの伝統だと言える」。2015年2月に部員8人だったところから丹念にチームを作り続けて6年余りが経過。3学年で計40人が汗を流すグラウンドを前に、芦沢監督は「野球部っぽくなったな」と笑みをこぼしながら、その「雰囲気」に目を細める。  そこには信念がある。「技術や体力よりも前に“人”としてどうあるべきか。大事なのは人間力」と芦沢監督は強調する。元プロ野球選手の経歴を持ち、指導者としても様々なカテゴリーの選手たちを育ててきたが、「プロも高校生も変わらない。人対人。どれだけ野球が上手くなっても、常に謙虚でいることが何よりも大事だ」と説く。  結果は求めない。「準備不足や全力疾走を怠った際には怒る」と言う芦沢監督だが、「プロでもミスをする。打った、打たれたという部分を怒っても仕方ない。僕が最初にやる作業は、気持ちを解放させてあげること」と言う。メンタルトレーニングを導入し、常にプラス思考で試合に臨める状態を作る。試合中、なかなか得点が奪えない展開が続けば、「無責任で行こう!」との声が飛ぶ。失敗を恐れることなく、初球から思い切り良くバットを振り切る。それが、啓明学園の野球だ。

■集大成の夏

無理に求めなくても、結果は付いてきた。日々、全力で汗を流しながら着実に力を伸ばしてきたチームは、2019年夏の3回戦で強豪・佼成学園に9対5の逆転勝利。昨夏の代替大会でも、最後は世田谷学園に2対4で敗れたが、2年連続で4回戦進出を果たして存在感を見せた。  今年の3年生について「全員真面目なのが特徴。手を抜くことがない。言われなくてもやる」と芦沢監督は評する。昨秋はブロック予選を突破した後の1回戦で桜美林相手に0対1、今春は2回戦で小山台と9対10。投手戦と乱打戦の違いはあれども、ともに実力校を相手に僅差の展開に持ち込み、熱戦を繰り広げた。コロナ禍でチーム練習ができなかった時期が長かった影響でミスは多くあったが、「このチームは明るい。チーム一丸となって声を出す」(野木裕太主将)と元気一杯の積極プレーは変わらなかった。

3年生たちの集大成となる今夏。「一戦一戦をしっかりと戦う中で、自分たちの野球をしたい。チーム全員が一丸となって、明るくワイワイやりながらも、しっかりとしたプレーを見せて、悔いのない試合をしたい」と野木主将。エース左腕の巌琉翔(3年)も「小学校から続けてきた野球。自分の長所を全部出して、啓明学園史上、一番長い夏にしたい」と意気込んだ。結果は関係ない。常に明るく。笑顔のナインたちが、そこにいるはずだ。

 

(2021年8月号掲載)

 

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