2016年夏ベスト4の実力校
悲願の甲子園へ「野武士のごとく」
県内実力校の一角として2016年夏ベスト4、2017年春・夏、2019年春にベスト8に進出した矢板中央。勢いに乗ったときの力強さは、県内屈指。チームは悲願の初甲子園を目指して努力を続けている。(取材・永島一顕)
■不安抱えた新チーム始動
昨年の秋季大会は、収穫と課題が入り混じった結果となった。
黒田純一監督によると、現チームには中学生時代に実績を残した選手はほとんどいないという。しかし、「とにかく野球が好き」という面々が集うチームは懸命に白球を追い続けてきた。
新チームとして迎えた昨秋の公式戦、コロナ禍の影響で練習試合ができなかったことなどもあり、黒田監督には不安があった。その不安が結果として表れてしまう。秋季大会のシードを決める交流戦の初戦で文星芸大附と対戦し2対13のコールド負け。県内トップレベルの力を持った強豪相手に対して、力を発揮することができなかった。指揮官は「技術がどうこうというより『人』として強さが不足していた」と精神面での未熟さを強く感じた。
秋季大会では1回戦で高根沢、2回戦で宇都宮清陵に快勝。3回戦では青藍泰斗と対峙し、善戦したものの1対3で屈した。2つの敗戦で痛感させられたのはメンタル面のもろさ。その課題を払拭しようと、選手たちは、シーズンオフに心技体の充実を図った。
■思い知らされた弱点
メンタル面に課題があったことは、選手自身も痛感していた。攻守の要・安達國生主将(新3年=捕手)が「(文星芸大附戦は)ムードを相手に作られて気持ちが引き、打席で迷いが生じていた」と振り返れば、エース菅野匠未(新3年=投手)は「アップから迫力負けし、相手の名前にひるんでしまい思い通りの投球ができなかった」と明かす。
選手たちに力がないわけでは決してなかったが、力を発揮することができなかった。リードオフマン齋藤司(新3年=外野手)も「相手の威圧感に負けて弱気になっていた」と話したが、選手たちは昨秋の敗戦時の心情を言葉にした。ただし、ゲームを冷静に振り返ってみると自分たちの戦いができていたシーンもあり、敗戦の裏には確かな収穫も存在していた。
■野武士のごとくたくましく
春・夏へ向かうチームの課題は、どんな相手に対しても確固たる自信を持って臨むこと。その自信を身につけるのは練習しかない。選手らはそんな気概を持ってシーズンオフを過ごしてきた。県外強豪校から練習方法などを聞き取り、「自分たちより強いチームがやっている以上の練習をする」(安達主将)という気持ちがチーム全体に浸透。和気悠飛(新3年=内野手)は「意義ある素振りを春までに3万5千回することを課した」と自らを追い込む。黒田監督は「受け身ではなく選手たちの意思が伝わってくるようになった」と手応えを感じている。
「春季大会4強、夏に優勝して甲子園に行く」というチーム目標は明確だ。矢板中央の選手たちは、確固たる自信を胸に、どんな相手にもひるまずに、野武士のごとくたくましく、戦っていく。