2019年夏覇者のプライド
昨秋・今春の屈辱を晴らす「夏」
2019年夏に深紅の優勝旗を手にした覇者・前橋育英。夏4連覇を果たしたチームは、その後の4大会で頂点にから遠ざかっている。選手たちは原点回帰で、復活を期す。
■真夏に力を発揮するチーム
2019年夏の決勝で前橋商を下して夏4連覇を果たした前橋育英。あの夏から2年が経過、コロナ禍で昨春が中止となり、昨夏が独自大会となる中で、前橋育英は4大会連続(2020年春中止)で優勝から遠ざかっている。2019年秋は準優勝、2020年夏の独自大会は準決勝で健大高崎に敗れてベスト4、昨秋は準々決勝で再び健大高崎に屈しベスト8。今春は3回戦で太田に3対10の7回コールドで敗れている。春大会を除けば決して悪くない成績だが、選手たちはもちろん満足していない。2016〜2019年夏を制してきたチームだが、これも常勝軍団となった故の宿命か。チームは重圧を力に変換して、再び立ち上がる。夏の育英。真夏に力を発揮するチームは、夏にアラームをかけて、自らの力を呼び覚ます。
■攻撃的な守備を取り戻せるか
課題ははっきりとしている。2020年夏独自大会準決勝・健大高崎戦は9対11、昨秋の準々決勝・健大高崎戦は7対10、そして今春の太田戦は3対10。最近3大会はいずれも10失点以上を喫している。2013年夏の全国制覇をはじめ各大会では、鍛え上げられた守備で数々の勝利を手繰り寄せてきた。だが、過去3大会では、投手を中心とした守備に綻びがみえている。右腕・外丸東眞(3年)、左腕・菊池樂(3年)のダブルエースを軸に、守備を立て直せるかが鍵となる。打線では春大会を負傷欠場した超高校級スラッガー皆川岳飛主将(3年=中堅手)が復活。荒井直樹監督が「飛ばす能力は過去で一番」と評する主砲が、チームを牽引する。最少失点で耐えられれば、おのずと勝利は見えてくる。攻撃的な守備。前橋育英は原点回帰で王者に返り咲く。
■勝たせてあげたいチーム
今大会は強豪ひしめくブロックに入った。2019年覇者の前橋育英は、抽選会時に優勝旗を返還。2020年が甲子園中止による独自大会となったため、ディフェンディングチャンピオンとして大会へ挑む。2016〜2019年の4連覇は現在も継続。今大会は、前人未到の“5連覇”を懸けた大会となる。荒井監督は「今年は互いに切磋琢磨できる選手たちが揃っている。純粋に勝たせてあげたいチームだ」と語る。サウスポーの菊池が「一戦一戦を勝ち抜くことで強くなれる」と話せば、皆川主将は「どんな相手と戦っても自分たちの野球をするだけ。ここまで結果を残すことができていないので、やってやろうという気持ちです。秋、春と負けてしまった中でも、僕らを支えてくれる人がいるということを全員が自覚して、強い気持ちで大会へ臨みたいと思います」と力を込める。支えてくれる人たちのために。その先に甲子園が見えてくる。
(2021年8月号掲載)