春夏通算10度甲子園出場の名門
昨夏の東東京大会ベスト16
春夏通算10度甲子園出場の名門・日大一が昨夏の東東京大会で7年ぶりにベスト16進出を果たした。先輩たちの魂を引き継ぐ選手たちは復活の扉を開くべく白球を追う。
■1968年から夏4連覇「夏の一高」
春夏通算10度甲子園出場を誇る日大一。1968年から1971年までの夏の東東京四連覇が、東京都高校野球の歴史に燦然と輝いている。1988年夏の甲子園を最後に、聖地からは遠ざかっているが、選手たちの野心は決して消えてはいない。10度の甲子園出場のうち、8度は夏。日大一は、新チーム結束から1年間を通じて強くなっていく。「夏の一高」と呼ばれたチームは復活を期して鍛錬を積む。昨夏の選手たちは東東京大会のトーナメントを駆け上がり、5回戦へ進出。7年ぶりにベスト16へ駒を進めた。エースで4番の佐藤和輝(3年)を軸にしたチームは、3回戦で東海大高輪台に延長12回の末に3対2で勝利。4回戦では共栄学園にも勝利してみせた。
OB指揮官の渡邉尚樹監督は「エースを中心に一体となって戦ってくれた。選手たちの集中力とチームとしての“まとまり”が結果を引き寄せたと思います」と振り返る。
■昨秋は予選1回戦で屈辱の敗戦
3年生が引退して新たなチームとなったが、2年生10人、1年生5人が伝統のバトンを継承して、再びダイヤモンドを駆けている。夏大会後、練習制限などがかかる中でチームは大きく入れ替わった。決して力がないわけではなかったが夏を経験した選手たちが限られている中で準備期間のないまま秋予選を迎えた。そんなチームは、予選1回戦で府中東に敗戦。9月中旬の段階で出直しを迫られた。夏のレギュラーだった福井颯斗(2年=内野手)は「夏の試合に出ていた僕らがチームを引っ張らなければいけなかったが、チームの形ができる前に負けてしまった」と悔やむ。渡邉監督は「夏の成績は3年生の結果。個人の力があっても、野球はチームの戦い。試合に勝つのは簡単ではない」と語る。
秋予選は暫定的に松田大聖(2年=投手)が主将を務めたが、ほかの選手たちがキャプテンに依存しているのを感じた指揮官は選手全員の意識改革を促すために、キャプテンを白紙に戻して再構築を図っている。
■2年生10人全員がキャプテン
キャプテン不在となったが、2年生10人全員がキャプテンにならなければいけない。再起を狙うチームは、福井、松田、鳥居隼人(2年=投手)、上原光陽(2年=外野手)が中心となってトレーニングに励む。鳥居は「秋は自分たちに甘さがあった。いまはみんなで話し合いながら全員がキャプテンのつもりで練習に取り組んでいる。春・夏は自分たちの力を見せたい」と巻き返しを誓う。
2021年春入学の1年生は5人のみでコロナ禍の影響もあり部員数が減ったが、今春には夏の飛躍をみた新1年生が門を叩く予定で、学年の枠を超えた競争が始まりそうだ。松田は「秋の予選敗退を糧にチームは成長している。3年生たちが残してくれたベスト16の結果を越えて、自分たちはベスト8以上を狙っていきたい」と夏を見据える。この世代は、入学時期からコロナ禍となり、チーム活動、団体行動に制限がかかった。昨年秋、コロナ感染拡大がひと段落したときには、オフに遊園地へ出掛けて一体感を高めたという。このままでは終われない。「夏の一高」が夏へ向けてギアを上げていく。