今春は激戦予選ブロックを通過し県大会へ
選手の自主性を伸ばす指導で新境地へ
県立ダークホース市ケ尾は、選手の個性を伸ばしながら結果を導いている。2018年の北神奈川大会ではベスト16進出、チームには大きな可能性が秘められている。
■夏休み中の猛練習がチームの糧
市ケ尾のグラウンドには、選手たちが成長するための“土壌”がある。中学時代に実績を残した選手はほとんどいないが、野球を真剣に楽しみながら、効果的なメニューを積み上げていくことで成長していく。2018年夏の北神奈川大会でベスト16進出、2019年夏、2020年夏には3回戦進出するなど着実に結果を残してきた。今年のチームはコロナ禍の2020年春入学の選手たち。3年生13人、2年生17人のチームだが、昨夏のレギュラーポジションを取った選手はいなかった。昨夏大会後の新チーム始動時に菅澤悠監督から、こう告げられた。「この世代は、この5年間で最弱のチームだ」。そして、夏休み中の猛練習を実行した。選手たちは過酷な夏休みを経て、「下克上」というチームスローガンを設定。意地で秋季予選を突破してみせた。
■「目標達成シート」で選手に変化
2017年春から指揮を執る菅澤監督は、チーム強化に情熱を捧げ、選手たちと大会へ挑んできた。コロナ禍後は、「目標達成シート」を採用し、選手たちにヒントを与えている。市ケ尾は「ベスト16レベルのチームを倒す」というチーム目標に対して、各個人が個別目標を掲げて、自主性を持って行動している。「目標達成シート」は月次と日報の2つがあり、選手たちは月次目標に対してのアプローチを日報に記入、日々目標を意識すると共に目標達成度を記入して、明日への準備を進めていく。項目の一つには、「今日の学び・成長できたこと→それを今後どう活かすか?」という欄があるが、選手たちは日々、自分と向き合うことで成長を遂げている。今年3月に卒業した前3年生たちは、六大学に7人が進学を果たすなど学習面での実績も残した。「目標達成」に向けてのアプローチは、野球だけではなく勉強にも活かされている。
■最弱から最強へ
昨秋、最弱と呼ばれたチームは、今春、進化の一端を結果で示した。春季予選では武相、神奈川工、神大附の激戦区に入ったが、神奈川工、神大附に勝利して2勝1敗で予選突破。チームは、最速136キロのエース渡邉拓実主将(3年)を軸に自信をつかみつつある。渡邉主将、左サイドの太古直希(3年)、右サイドの木澤卓也(2年)の投手陣が安定、八木悠真(3年=外野手)、志村海都(3年=遊撃手)の打撃キーマンがチャンスを演出していく。渡邉主将は「チーム始動時には力が足りなかったが、個人が成長することでチーム力が備わってきた。夏はシードクラスを倒して、この5年間で最高の成績を残したい」と話す。菅澤監督は「最弱と呼ばれた選手たちが日々成長していく姿に指導者としてやりがいを感じる。もしかしたら、この5年間で一番強くなっていくかもしれない」と目を細める。最弱から最強へ。目標達成のプロセスが選手を進化させていく。