春夏甲子園35回出場の名門
2年連続の夏甲子園へチーム一丸
昨夏の神奈川覇者・横浜は、秋大会3回戦時点でコロナによって辞退となり、春はベスト8に終わった。試練を乗り越えてきたチームは、揺るぎない結束力を武器に夏連覇を目指す。
■夏のクライマックスへ
昨夏の保土ケ谷球場での決勝戦で、横浜の選手たちは歓喜の輪を作った。2020年春に県教員を辞職し母校横浜指揮官に就任した村田浩明監督は、勝利インタビュー時に目を潤ませた。波乱の大会を制した新生・横浜は2018年以来の夏甲子園の舞台に立った。あれから1年、横浜は再び夏を迎えようとしている。 横浜は6月下旬、OB会の協力によって横浜スタジアムを借りての特別練習を行った。選手たちはグラウンドに入ると、人工芝の感触、外野フェンスまでの距離感などを入念に確認して練習をスタートさせた。そしてシートノック、紅白戦を行い、夏のクライマックスへの準備に充てた。玉城陽希主将(3年=捕手)のキャプテンシーのもと一つになるチームは、順調な仕上がりぶりを示した。主砲・岸本一心(3年=外野手)は「去年の夏は、3年生の先輩たちに甲子園に連れていってもらった。今年は、自分たちの力で後輩たちに道を示していきたい」と伝統継承を誓う。
■「結束力」をテーマに再起動
今季のチームは、岸本、玉城主将のほか、緒方漣(現2年=内野手)、エース杉山遥希(現2年)ら昨夏の甲子園経験がある選手が多く残る。夏・春連続甲子園を狙えるメンバーだったが、チーム始動となった秋大会3回戦前にチーム内のコロナ感染拡大によって参加を辞退。選抜甲子園への道は、戦う前に断たれてしまった。選手たちは前向きな姿勢で冬のトレーニングに励み春大会を迎えたが、持てる力のすべてを発揮することなく準々決勝の桐光学園戦で敗れた。春大会の前後には、一部部員の退部問題によって周囲が騒がしくなった。村田監督は静観していたが、それも夏を控える選手たちのため。学校は調査委員会を設置し調査。その問題が事実と認められなかったことを校長と父母会会長の連名で6月1日に発表した。夏に向けて気持ちを一つにした選手たちは「結束力」をテーマに再起動。横浜は、信頼という名の絆のもと、ゆるぎない強さを身につけた。
■部員全員の弾ける笑顔
特別練習時、横浜スタジアムのダイヤモンドを駆ける選手たちの表情からは、この仲間たち、そして、横浜高で野球ができる喜びがあふれ出ていた。村田監督は「チームにとって選手が一番の財産。この選手たちと一緒に横浜スタジアムに戻ってきます」と語った。玉城主将は「秋の大会辞退から夏大会前までいろんなことがあったが、村田先生は、どんなときも僕ら選手たちを守ってくれた。その恩返しとして横浜スタジアムで先生を胴上げしたい」と大会へ向かう。チームは横浜スタジアムで集合写真撮影を行ったが、そこには部員全員の弾ける笑顔があった。それが、すべての答えだ。 名門は困難に屈しない。横浜は名門の宿命を背負いながら、神奈川の頂点を狙う。今夏、横浜は名門たる所以(ゆえん)とその矜持を自らの戦いで示していく。