伝説に残る「内野5人シフト」の大胆策
3回戦で延長タイブレーク激闘の末に「涙」
早稲田実が第106回全国高等学校野球選手権大会で記憶に残る戦いを演じた。3回戦で大社(島根)に屈したが、甲子園の大舞台で野球の魅力、奥深さを伝えた。
■外野2人、内野5人の守備シフト敢行
3回戦の早稲田実対大社戦は、甲子園史に残る好ゲームだった。早稲田実は、大会で進化を遂げた2年生左腕エース中村心大が先発してゲームをつくった。中村は最速145キロに迫るストレートを武器に、2回戦・鶴岡東戦では延長10回完封勝利。大社戦では初回に1失点したものの打線が6、7回に1点ずつを奪って2対1と逆転に成功。息詰まる投手戦は2対1で9回を迎えた。早稲田実はスクイズで1点を失うと2対2の9回裏一死2、3塁のピンチ。そこで知将が動いた。レフトの石原優成に替えて西村悟志を起用。西村がピッチャーとサードの間に立ってスクイズを警戒する「内野5人シフト」を敷いた。スタンドがどよめく中で大社の打球は、西村の位置に転がり、“内野ゴロ”で一塁がアウト。本塁を突いた3塁ランナーも一塁からの返球でアウトになりダブルプレーが成立した。
■延長タイブレークで得点できず無念の敗戦
延長タイブレークに進んだゲームはどちらが勝ってもおかしくない状況だった。早稲田実は10、11回に相手エース馬庭優太に抑えられて得点できず、11回裏に1点を奪われてサヨナラ敗戦。タイブレークの死闘にはスタンドから割れんばかりの拍手が贈られた。試合後、大社の選手たちに声をかけてからグラウンドを引き上げた和泉実監督は「こんなに良い試合を経験させてもらって、選手たちはすごいと思った。お互いが美しかった、この試合はいつまでも覚えていると思う」と両軍の選手たちへの感謝を伝えた。宇野真仁朗主将をはじめ選手たちは、あふれる涙を止められなかった。一球入魂を掲げる早稲田実の甲子園での戦いは3回戦で終わったが、大社とのゲームは9回のバントシフトの奇策と共に永遠に語り継がれるだろう。