スローガンは「仲間を信じて笑顔で」
15年ぶりに秋都大会へ進出し歴史的勝利
東京タワーを見上げる場所に校舎がある伝統私立校・正則。狭い練習環境ながらも野球を楽しみながら成長していくチームは今秋、15年ぶりに都大会へ進出し勝利を挙げた。
■アップは東京タワー下の芝公園
「練習前のアップは、(東京タワー下の)芝公園でやっているんです」。畑田一拓主将(2年=外野手)は微笑む。正則は、芝公園に隣接。校庭はテニスコート2面ほどのハードコート。各部が共用のため校庭での練習は週2回ほど。そのほかの日は、芝公園でストレッチなどを行い、室内でのフィジカルトレーニングに専念する。環境への言い訳はしない。できないことを悲観するのではなく、できることをみんなで探して創意工夫していく。それがチームの原点だ。地力を蓄えるチームは今夏の東東京大会2回戦で大森学園を撃破する金星を挙げている。畑田主将は「入学前は狭いグラウンドが不安だったが、いまは前向きに考えられるようになった。みんなの“武器”を結集すればもっと勝ち上がれると思う」と胸を張る。
■狭い環境でも勝てるチームへ
選手たちの野球熱に寄り添うのは、OBの岸本淳監督だ。高校時代は、恩師・渡辺徹前監督のもとで野球の面白さを知り、大学卒業後に教員として母校へ戻り野球指導の道へ。恩師からタスキを受け取り後輩たちに野球の魅力を伝えている。印象に残っている試合は、2016年夏3回戦。神宮球場で行われた帝京戦だ。2対4で迎えた9回に代打の選手がヒット出塁すると、球場全体が沸いた。二死満塁で一打同点にチャンスを作ったが惜敗。応援席のエールと選手の涙は忘れられない。コロナ禍によって一時的に部員が減ったが、全員野球で勝利を目指すチームの雰囲気が支持を集めて、現2年生は13人、1年生は17人と増加傾向。来春に新入生が加われば50人規模のチームになる。岸本監督は「この環境でも勝てることを選手に伝えていきたい。その経験は今後の人生につながっていくはず」と指導に励む。
■東京タワーの“真下”から神宮へ
個性が輝く集団だ。チームの軸は、エース右腕・山田悠剛(2年)と、中学強豪シニア出身の主砲・田中嵐士(2年=外野手・投手)。最速130キロの実戦派山田が「(髪型が)丸刈りではないのもチームの魅力。みんなの力を合わせて、勝つ面白さを味わえる」と話せば主砲・田中は「部員全員の仲が良く、みんなで一生懸命に努力できるチーム。勝利に導くバッティングをみせていきたい」と野球を本気で楽しむ。2番手投手・中村湊(2年)や守備の要・藤尾聡太(2年=内野手)もチームの役割を果たす。今季のチームのスローガンは「仲間を信じて笑顔で」。新チーム始動直後のミーティングで、選手たちが話し合って決めた。「一人ひとりの力は小さいかもしれないが、力を合わせることで格上のチームを倒すことができる。仲間を信じて、明るく戦っていきたい」(畑田主将)。東京タワーの“真下”から神宮の大舞台を目指す。