
秋は劇的サヨナラ勝利で県大会出場
1勝の喜びを知る少数精鋭チーム
昨秋、選手13人ながら22年ぶりの県大会出場を果たした磐田農。掛川西出身の若き指揮官のもと、愛されるチームづくりが始まっている。(取材・栗山司)
■22年ぶりの県出場を自信に
「君たちが磐農の歴史を作るんだ」
昨秋の県予選。杉本進監督はそう選手に投げかけ続けた。初戦は袋井に勝利。そして勝てば県大会出場が決まる浜北西との敗者復活戦は緊迫した展開となった。両チームが7回まで無得点。8回表に1点の先制を許すと、その裏にすかさず同点に追いつく。延長10回裏、再び1点のリードを許したが、ここでドラマが待っていた。2死二三塁の場面で3番・堀内太琥(新3年=外野手)が放った打球は左中間へ。二塁走者としてサヨナラのホームを踏んだ主将の諸井巽(新3年=外野手)は「嬉しかった」と振り返り、胸を張ってこう続ける。「大会前の練習から一人ひとりの声が出ていて、チームに一体感がありました。それが勝利につながったと思います」
前チームでは3年生がセンターラインを固めていたため、新チーム結成当初は不安を抱えてのスタートとなった。それでも日を追うごとに成長を遂げ、わずか13人の選手で22年ぶりとなる県大会出場を果たした。杉本監督は選手たちの姿を誇らしげに見つめる。「私はただそんな選手たちの背中を押していただけ。2年生が4人と少ない中で全力を出してくれ、そこに1年生が乗っていってくれた」
県大会では御殿場西に0対9で敗れたが、選手たちは確かな自信を手にし、オフシーズンを過ごした。
■チームのルールを見直す
杉本監督は掛川西出身。高校3年夏は県大会で決勝に勝ち進んだ。惜しくも甲子園にはあと一歩届かなかったが、「人間的に成長できた」という3年間が指導者としての土台となっている。2023年秋に磐田農の監督となり、自らが高校時代に学んだように、「誰からも愛される振る舞いをしよう」と、礼儀や挨拶を大事にすることから始め、チームのルールも見直していった。練習面で力を注いでいるのが守備。この冬も、捕球の姿勢作りなど基礎練習を繰り返してきた。また、昨年末には2泊3日で合宿を敢行。校内の施設に宿泊し、早朝からランニングやバットを振り込んだ。「やり遂げた達成感を味わってほしかった」と杉本監督。チームの一体感も生まれていった。
■磐農旋風を巻き起こす
この春の目標は再び県大会に出場して1勝を挙げること。強豪の実力を知ったことが、モチベーションとなっている。身長180センチのエース左腕・寺田京祐(新2年)は体が一回り大きくなって球速も着実にアップしている。伸びしろは十分。今年、大きく飛躍する可能性を秘めている。打線は4番の酒井大煌(新2年=内野手)を軸に、つなぐ意識を徹底し、得点を重ねていく。
チームの新たな歴史はここから始まる。若き情熱的な指揮官のもと、「磐農」旋風を県内に巻き起こす。