
2013年夏に全国制覇を達成し2016年夏から5大会連続で甲子園出場を果たした前橋育英。「超越」を今年のスローガンとするチームは、ライバル、そして己を超えていくことで4年ぶりの王座奪還を狙う。
■原田最強世代が覇権を狙う
「打倒健大 原田最強世代」。前橋育英練習場の脇の掲示板には、こんな言葉が書かれている。高校通算44本塁打の主砲・原田大聖主将(3年=内野手)は「今年は自分がキャプテンをやっているので、チームメイトが『原田最強世代』と言っている。今年は、健大を倒さなければ甲子園に行けないと思うので、強い気持ちで練習に取り組んでいる」とバットを振る。前橋育英は昨夏、昨秋、今春の3大会連続で、準決勝で健大高崎に敗れている。昨夏は2対8で迎えた9回裏に一挙6点を奪って同点に追いつくと、尚も無死満塁で大逆転勝利かと思われたが決勝点が奪えずに延長タイブレークで力尽きた。
■秋・春ともに健大に7回コールド敗戦
新チームで迎えた昨秋は準決勝で健大高崎と対戦して、最速150キロ超のエース石垣元気に抑え込まれて0対7の7回コールド完敗となった。オフシーズン、選手たちは攻守のスケールアップを図った。春大会は準決勝で対戦すると先発石垣から4回までに2点を奪って2対0とリード。しかし5回に守備のミス絡みで逆転を許すとリズムが崩れて2対10で再び7回コールドとなった。秋・春ともにコールド大敗。この結果をどう受け止めるのか。エース片岡季里(3年)は「春は守備のミスから逆転されたが、自分のピッチングができれば、通用する手応えがあった」と対健大高崎のイメージをつかんだ。トーナメント抽選の結果、前橋育英と健大高崎がともに勝ち上がれば対戦するのは決勝戦。原田主将は「一戦必勝で勝ち上がった先に決勝戦がある」と一戦一戦に照準を合わせる。
■過去の夏大会で幾多のミラクル劇
前橋育英は2021年夏以来、甲子園から遠ざかる。荒井直樹監督は「3年も甲子園に行っていないと忘れられてしまうよ」とおどけながらも王座奪還に情熱を燃やす。選手と対話しながら夏へ向かう。相手は健大高崎だけではないと前置きした上で「健大は昨春選抜で優勝して今年の選抜もベスト4。相手に力があるのは間違いないが、“いま”の健大を倒すことに意味がある。夏大会では過去に何度も奇跡が起きた。夏だから戦える、と思っている」と難関突破を狙う。部訓は「凡事徹底」。選手たちが決めた今年のスローガンは「超越」。ライバル、そして自分たち自身を超えていくことを目指す。2018年夏決勝・健大高崎戦(6対5逆転勝利)をはじめ前橋育英は夏に多くのミラクル劇を演じてきた。奇跡は起きるものではなく起こすもの。選手たちは、成長の軌跡を夏のトーナメントに刻む。