架空の「優勝号外」作成で夢へのイメージ
悲願の甲子園初出場へスタンバイ

悲願の甲子園初出場を目指す日大。就任28年目を迎える伊藤謙吾監督は、新たなアプローチで選手と共に「神奈川の頂き」を狙っていく。

■2013年秋季県大会で準優勝

「24歳のときから監督を任せてもらっていますが、負けた試合はすべて覚えています。どの試合も今でも悔しい」。今年で就任28年目を迎える伊藤監督はこう話す。毎年のチーム、選手たちにドラマがあり、すべてがチームの伝統を築いてきた。27シーズンを振り返る指揮官の印象に強く残っているのは、2013年の秋季県大会だ。その年のチームは、戦力的に厳しい戦いになると想定していたが、自分たちの力を把握していた選手たちが“出来ること”を精一杯やっていった結果、準々決勝で武相に僅差で勝利し準決勝では桐光学園に競り勝って決勝へ進出。決勝では横浜に2対4で敗れたものの、神奈川2位で関東大会出場を決めた。関東大会では1回戦で山梨学院に惜敗し「選抜」には届かなかったが、甲子園に近づいた瞬間だった。

■選手能力の足し算ではない

伊藤監督は、2005年のドラフト会議において高校生1位で荒川雄太(捕手)を送り出すなど多くの経験を積んできた。「愛される指揮官」が率いる日大は2016年春にも準優勝、2017年夏にはベスト4に進出し、準決勝では森下翔太(現阪神)を擁した東海大相模と好ゲーム(1対5)を演じてみせた。伊藤監督は「高校野球は、選手能力の足し算ではなく、努力や情熱の掛け算。それが指導者としてのやりがいであり、高校野球の魅力だと思う。2013年の秋季県大会では、決して力があるとは言えない選手たちが精一杯のプレーをみせて関東大会へ連れていってくれた。あれから12年が経っていて神奈川で勝つのは簡単ではないが、不可能ではない。選手たちには『奇跡を起こそう』と伝えている」と語る。

■神奈川制覇へのアプローチ

今年は、勝利へのアプローチをより具体的にしていくという。「奇跡を起こす」という言葉を掲げるだけではなく、そのためには何が必要かを考えて逆算している。1月のミーティングでは各選手たちに「優勝号外」の“未来記事”を作るように提案。選手たちには、どのように勝ち上がったのか、そして自分自身の活躍も含めて書き出すよう求めた。選手が作った「夢の号外」には「日大、初優勝!」などの見出しが“踊り”、選手たちの活躍が綴られた。渡辺瑛心主将(3年=外野手)は「優勝の記事を書くことで、どうやったら勝てるかのアイデアが浮かんできた。号外を実現させていきたい」と夏へのイメージを膨らませた。2025年、日大は神奈川の頂点に立ち、“未来記事”を実現させていく。

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