ノーサイン野球で選手の主体性向上
「選手の個性を伸ばす野球」で勝利をつかむ

2017年夏にベスト16に進出するなど確かな実績を残す足立学園。野心をみなぎらせるチームは、春の悔しさを力に変換して今夏に下克上を狙っていく。

■2017年夏にベスト16進出

勢いに乗ったときの強さは本物だ。チームは北千住の学校敷地内でトレーニングに励むほか、埼玉県三郷市のグラウンドに足を運び、実戦練習を積み重ねる。2017年夏には3回戦で明大中野、4回戦で立正大立正を撃破し、下町に勇気を届けた。2023年夏は3回戦で好投手・中村海斗を擁した明大中野に1対3と善戦。昨夏は3回戦で日体大荏原と対戦し、エース木下惟德の好投でロースコアの戦いに持ち込み、食らいついていった。結果は1対3だったが、選手たちは持てる力を発揮した。足立学園の特筆すべきポイントは選手主体のノーサイン野球であるということ。2021年秋以降に取り組み、手応えを得ている。

■ノーサイン野球に手応え

きっかけは2021年秋季都大会の修徳戦だった。その年の新チームは戦力が揃っていたが、0対6で敗れた。OB指揮官・塚本達也監督は、受け身ではなく選手主体のチームに“進化”させるためノーサイン野球を採用し、選手と共に試行錯誤を重ねてきた。当初は選手たちの理解度が深まらずに失敗が続いた時期もあったが、指揮官は選手を信じ続けた。そして昨夏の日体大荏原戦の終盤では、2塁ランナーが果敢に三盗にチャレンジして成功させたという。それは指揮官のイメージと合致した戦略だった。塚本監督は「勝つことはできなかったが、ノーサイン野球をやってきて良かったと感じた。忘れられないゲームになった」と話す。

■下克上を狙う個性派軍団

 攻守の要・岡田一桜主将(3年=捕手)が軸となるチームは、最速139キロの絶対エース水原歩也(3年)、主砲・板倉健(3年=外野手)ら能力の高い選手たちが揃う。今春の一次予選1回戦で京華に6対4、予選決勝では千歳丘に3対2で勝ち切った。千歳丘戦はエース水原が気迫のピッチングで完投し、春都大会出場を決めた。都大会1回戦では狛江と対戦し、最終回までリードしながらも守りきれずに6対7で惜敗。選手たちは敗戦を受け止めて、夏モードへ気持ちを切り替えた。岡田主将は「選手の力はあるので、どれだけ本気になれるか。夏は格上のチームを倒したい」と下克上を誓う。このままでは終われない。下町の雄・足立学園は、ノーサイン野球に磨きをかけて最後の夏へ向かう。

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