昨秋新監督が就任した「公立の星」
春予選で金星を挙げた完封勝利エースがチーム牽引

「文武両道」を校是とする焼津中央。春の県予選では強豪・藤枝明成を破り、成果を示す一勝を挙げた。初めての夏を迎える宮本祐希監督はじめ、チームが徐々に引き締まっている。(取材・栗山司)

■ユニホーム負けしないチームに!

新監督のもと、「公立の星」が大きな一歩を踏み出した。
 今春の県予選では藤枝明誠と対戦。試合は0対0のまま緊迫した展開が続いたが、迎えた8回にワンチャンスをものにして1対0で勝利。見事、金星を挙げた。
 「やってきたことを出してくれた」。昨年9月に監督に就任した宮本祐希監督は、選手たちの奮闘をそう振り返る。
 宮本監督はこれまで佐久間で2年間、焼津中央で約5年間副部長を務め、着実に指導経験を積んできた。就任後、まず取り組んだのは「ユニホームに名前負けしない」メンタル面の強化だった。
 県内外の強豪校と積極的に練習試合を組み、胸を借りて実力を磨いていった。当初はBチームの相手にも大敗を喫することがあったが、経験を重ねるごとに互角に戦える場面も増え、選手たちの表情にも自信が宿り始めた。主将の田形将希(3年=内野手)は語る。「最初は相手のペースに飲まれてしまうことが多かったのですが、その経験が藤枝明誠との試合で生きてきたと思います」。
 オフシーズンはトレーニングを最小限にとどめ、投げる・打つ・捕るといった基本技術の向上に特化。選手一人ひとりが日々の練習内容や上達点、課題をプリント用紙に記入し、それに対して宮本監督がコメントを返すというサイクルを毎日繰り返していった。地道な取り組みがチーム力の底上げにつながっている。

■投打のキープレーヤー

藤枝明誠戦で完封勝利を挙げたのがエースの石田哲也(3年)。小学1年から野球を始め、東海大静岡翔洋中に進学したが、2年冬に左膝の前十字靱帯を断裂。全国準優勝を果たした3年夏は記録員としてチームを支えた。高校進学後も野球を続けるか迷ったが、本格的に投手としての道を歩むことを決意。そして、藤枝明誠戦でその努力を結実させる最高の投球を見せた。
 野手のキープレーヤーは1番打者の鈴木璃空(3年=外野手)。走攻守の三拍子が揃い、勝負どころで一本を放つ勝負強さも兼ね備える。攻撃の起点として、夏もチームを引っ張る存在だ。

■新校舎完成を彩る夏へ

この夏、目標は「ベスト8」。藤枝明誠戦での金星のあと、2連敗で県大会出場を逃した。2試合連続の完封負けと打撃面に課題を残したが、「守備で粘り抜く」スタイルはブレていない。「春の大会を通じて、自分たちの強さは守備だと確信できました。もちろん攻撃でも点を取れるようにしたいですが、守備の基礎を大切にしていきます」(田形)
 今年10月にはグラウンド奥に新校舎が完成予定。チームはその完成を祝うかのような快進撃を、この夏に見せようとしている。

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