
完全中高一貫教育の新たな挑戦
6年間のメリットを活かして切磋琢磨
完全中高一貫教育の穎明館は2004年西東京大会準優勝、2011年同大会ベスト8の実績を持つ。コロナ禍などで一時期に部員が減少したが、チームには再び活気が戻ってきている。選手たちは文武両道を貫きながら6年間という時間で大きく成長していく。
■2004年西東京大会で準優勝
土台が再び出来上がりつつある。穎明館は2004年西東京大会準決勝で国立に勝利して決勝へ進出、甲子園出場へ“あと1勝”に迫った。決勝で日大三に屈して準優勝となったが堂々の結果だった。2007年の完全中高一貫移行後の2011年夏にもベスト8へ進出するなど西東京のダークホースとなった。当時は野球部強化に力を入れたが、完全中高一貫への移行の影響によって一時期は部員が減少。2019年秋、2020年秋には連合チームで大会に参戦した。2022年頃からは、生徒に寄り添う教育方針や野球指導などが評判を呼び、中学野球部の人数が増えている。現在は高校17人、中学(軟式)38人が切磋琢磨する。中学野球引退後には、ブランクなく高校野球部に合流できるメリットもあり、6年間という時間を有効活用したマネジメントが進む。
■仲間と共に成長する喜び
生徒たちは授業が終わると待ち侘びたようにグラウンドへ飛び出してくる。練習環境は、専用グラウンドのほか系列校・堀越の野球場を週1回利用してボールを追う。チームを指揮するのは中高一貫・芝で文武両道を貫き、大学卒業後の2016年春に教員となった望月拓磨監督だ。2018年春に監督就任したときは連合チームでの戦いを経験した。部員を増やすには、中学の間口を広げるしかない。学校やコーチ陣と連携して小学生対象の体験教室を実施するなど地道な活動を続けた。それによって中学生部員が増え、将来のチーム基盤が見えてきた。中学野球部は望月監督の芝時代の後輩・田中陸監督が指揮。中高の連携を大切にしながら指導を行う。32歳の若き指揮官は「母校・芝高校で中高一貫野球の魅力に触れて穎明館の教員になった。(監督就任時は)ゼロからのスタートだったがすべてがチームの財産になっている。中高一貫でも勝てることを証明したい」と情熱を注ぐ。
■スローガンは「一瞬の勝負を制する」
チームスローガンは「一瞬の勝負を制する」。野球は約2時間のスポーツだが、局面は1対1。一瞬のプレーを制することが勝利につながっていく。選手たちは、その一瞬を制するために6年間という時間を費やしていく。一村颯主将(3年=捕手)は「チームメイトは6年間ずっと一緒なので家族のような存在。去年の夏は初戦で駒場学園と戦って4対7で負けたが中盤までは互角の戦いができた。先輩たちが輝いている姿をみて、ここでの時間が自分たちを成長させてくれていると感じた」と話す。選手たちは6年間の努力と絆を信じて、夏の舞台へ向かう。穎明館で過ごした時間が夏、そして将来の力になっていく。