今春の県大会でベスト32へ進出した伝統校
投打のデータ計測で選手の課題を克服
春県大会でベスト32へ進出した伝統進学校・厚木。最新データ計測器を導入するチームは、データサイエンス野球を掲げて夏のグラウンドへ立つ。
■春は向上と接戦を演じる
伝統進学校・厚木は1950年夏にベスト4進出を果たした実績を持つ。2016年夏にベスト16へ進出、2018年の北神奈川大会でもベスト16へ駒を進めている。最近はコロナ禍もあり、1、2回戦での敗戦が続いていたが、今春は大きな手応えをつかんでいる。予選で神奈川総合産業、座間、海老名に3連勝で県大会進出を決めると、1回戦で藤沢清流と対戦した。ゲームは序盤に厚木が5点リードして中盤に向かうが、互いに得点を奪い合うシーソーゲームとなっていく。厚木は8対5で迎えた9回表にまさかの5失点で逆転を許したが、9回裏に安永圭杜(3年=内野手)のタイムリーで勢いづくと、最後は内之浦壮太(2年=内野手)の犠飛でサヨナラ勝利を決めた。3回戦では向上と対戦して、エース田中步武(3年)が好投しロースコアの展開へ持ち込んだが惜しくも0対2で敗れた。春の好ゲームは、飛躍の序章だ。
■データ計測で多角的な成長
チームを指揮するのは、「サイエンスデータ野球」を考案する熊倉周平監督だ。慶応高から慶応大へ進み、大学時代は慶応藤沢で学生コーチとして指導。その後、筑波大で学び、県教員となった。大和東での指導を経て2016年春に厚木に着任、今年で8年目となっている。就任当初からインコースとアウトコースのスイングスピードの変化などを計測し選手たちにフィードバックしてきた。2021年には、野球部内に研究班が誕生。選手たちが走塁のコース取りをデータで検証。2022年にはラプソードを導入してデータを収集し、投球データと制球の関係について調べた。熊倉監督は「データを取ることによって選手たちの意識が変わってきている。野球を多角的に捉えていくことが成長へつながっていく」と選手たちを見守る。
■夏飛躍へ、進化のスケジュール
春大会を終えたチームに残された時間は約2カ月。選手たちは夏大会開幕までの日程を逆算して、進化のスケジュールを決めていく。チームをまとめるのは、攻守に堅実なプレーをみせる岸優希主将(3年=内野手)。今年のチームは、春3回戦の向上戦で先発し8回を被安打6、投球数76で終えたエース左腕・田中のピッチングが鍵を握る。打線では主砲・安永が勝負強いバッティングをみせて得点に絡む。投打の歯車がかみ合えば、夏のダークホースになる可能性を秘めている。岸主将は「グラウンドでの経験とデータを組み合わせることで勝ち上がっていきたい」と夏を待つ。夏に向けて士気を高める厚木は、『データ+情熱』で勝利を目指す。