春夏6度の甲子園出場を誇る伝統校
2002年春以来の甲子園へ、いざ弓を引く
春夏6度の甲子園出場を誇る伝統校・前橋。2002年春以来、甲子園には届いていないが選手たちの情熱は変わらない。「マエタカ」は、選手たちの力で歴史をアップデートしていく。
■群馬県下随一の伝統の底力
「イケイケ マエバシ!」。迫力の応援がスタンドに響いたとき、前橋は底力を発揮する。群馬県下随一の伝統を誇示する進学校。文武両道を実践し多くの人材を輩出してきた前橋は、春2回・夏4回の甲子園出場を成し遂げてきた。選抜初出場となった1978年春1回戦・比叡山戦では、松本稔氏(現桐生監督)が変幻自在のピッチングをみせて甲子園初の完全試合を達成し1−0で勝利した。あの快挙は今でも高校野球ファンの間で語り継がれている。チームは松本氏が指揮した2002年の選抜出場以来甲子園からは遠ざかっているが、選手たちは虎視眈々と頂点を狙っている。大学野球にも多くの選手を送り出し、慶応大・斎藤快太(大学3年=内野手)が六大学オールスターに選出された。
■マエタカの伝統は「選手が主役」
前橋は代々、OBがチームを率いてきた。松本監督(1992〜2007年度)、安田智則監督(2008〜2018年度)が指導したのち2019年にはOB濱田豪監督にバトンが手渡された。太田東、玉村、沼田を指揮して母校のユニホームに再び袖を通した。濱田監督は、松本氏の完全試合がきっかけで前橋入学を志願し、甲子園を目指した。そして筑波大卒業後に、母校での指導を志して教員の道を歩んだ。濱田監督は「現役時代に甲子園へ行けなかった悔しさが強かった。指導者になって母校で甲子園を目指したいと思った」と振り返る。指導の原点は「選手が主役」。それは中原の覇者・マエタカの伝統だ。
■自分たちで考える練習メニュー
自主自立の伝統は脈々と引き継がれる。前橋の選手たちは、自分たちで練習メニューを考えながら実戦へつなげていく。杉本陽鷹主将(2年=外野手)とマネジメントリーダーの櫻井龍(2年=捕手)が中心となってメニューを濱田監督に提案。アドバイスを受けながら日々の練習に励む。櫻井は「チームの課題を練習メニューに反映している。自分たちで考えることが成長につながっていく」と話す。今季のチームは、杉本主将、櫻井、林昇史(2年=内野手)らが形成する破壊力ある打線と、威力あるストレートを投げ込むエース宮下大澄(2年)が軸。新チームで迎えた昨秋大会では3回戦で桐生第一に屈したが、この冬に課題を克服して球春を待つ。杉本主将は「投打の力はあるので自分たちでムードを作って勢いに乗っていきたい」と春・夏へ向かう。2002年春以来の甲子園へ、戦いの時は迫っている。