秋季神奈川県大会優勝で関東大会へ
「秋優勝は全国制覇に向けての通過点です」
横浜が秋季神奈川県大会優勝で2年ぶり20度目の優勝を果たした。名門を率いる村田浩明監督は安堵の表情を見せながらも、地元神奈川開催の関東大会へ向けて気持ちを引き締めていた。
■秋決勝で東海大相模に勝利
横浜は秋季神奈川県大会決勝で東海大相模と対戦した。今夏の神奈川大会で敗れた相手だったが、村田監督は選手たちに意識せずに平常心で臨むように伝えていた。「相模(東海大相模)には決勝で負けていたので、試合前から選手たちには(夏のリベンジへの)気負いが見えていました。夏の敗戦を意識せずに目の前の試合に勝つことだけに集中させました」
序盤に3点を先制すると、5回にも追加点を奪って4対0とリード。先発した織田翔希が6回途中まで無安打ピッチング。6回に2点を奪われたが、指揮官、チームに動揺はなかった。「織田が大会を通じて成長してくれました。6回にピンチを迎えましたが、夏の経験を生かして役割を果たしてくれたと思います」
チームは8回に1点を追加して5対2で逃げ切った。夏の神奈川大会決勝では4対2とリードしながら8回に3失点して逆転負けとなったが、今秋はしっかりと勝ち切ってチームの進化を示した。「もう少し打撃で得点が奪えれば良かったのですが、相手が初見のピッチャーの継投策で来ていて、チャンスで奪い切ることができませんでした。関東大会では、こういう試合になる可能性もあるので、攻撃の課題として次へつなげていきたいと思います」
■名門を背負う責任と覚悟
2020年3月に県立教員を辞して、母校・横浜の監督を引き受けた。2020年はコロナ禍で大会が中止となったが(独自大会のみ開催)、2021、2022年は夏甲子園に連続出場し、名門指揮官としての責務を果たした。
だが試練が待っていた。3連覇を狙った2023年夏には、決勝で慶應義塾と対戦。8回まで5対3とリードしながらも、9回表の併殺を狙う守備でショートが二塁ベースを踏まなかったと判定される“疑惑のジャッジ”が発生。リズムを崩した横浜は5対6の逆転負けとなった。
村田監督は「生徒たちは高校野球に人生をかけて一生懸命にやっています。私にとって野球人生で一番大きかったプレー。審判さんはもちろんリスペクトしていますが、納得がいかない部分もありました」と、監督として選手の心情を代弁した。
王座奪還を目指した今夏も決勝へ進出すると東海大相模と対峙した。4対2のリードで8回を迎えたが、反撃を受けて4対5で逆転を許した。指揮官は「相手の流れを止めることができなかった。投手起用を含めて、やれることはあったと思います」と、うなだれる選手をかばい、敗戦の責任を自身で背負った。
敗戦後に発した言葉には、選手に寄り添い、選手を“守る”姿勢がにじみ出ていた。
■村田監督自身初の選抜出場へ
横浜は秋季神奈川大会決勝で勝利して、2年ぶりの優勝を果たした。横浜監督就任後、夏は2度の甲子園出場を果たしたが、選抜切符はつかむことができていない。2022年秋季関東大会は1回戦で浦和学院(埼玉)に勝利したが、準々決勝で健大高崎(群馬)に屈して選抜出場を逃した。昨秋は1回戦で花咲徳栄に敗れて行く手を阻まれた。神奈川代表が故に徹底マークを受ける関東大会で、いかに戦うかが鍵となる。「秋の神奈川で優勝することはできましたが、夏の甲子園を逃した悔しさを払拭できたわけではありません。秋の神奈川優勝は単なる通過点。関東大会では悔しい思いしかないので、関東で勝つことでチームの成長を示したい。関東で負ければ、県優勝の意味が薄れてしまう。夏の甲子園では、慶應が昨夏に全国制覇し、今夏は東海大相模がベスト8に入るなど結果を残しています。神奈川代表として関東大会を制して、選抜で全国制覇することがチームの目標。そのために選手たちと一緒に戦っていきます」。神奈川を制した横浜は、スーパーシードで秋季関東大会へ参戦する。