限られた環境の中で着実に進化。
8年ぶりの夏勝利へ手応え
1973年夏に県準優勝の実績を持つ古豪・静岡北。
近年は夏の大会で7年連続初戦敗退となっているが、チームは着実に進化している。
(取材・栗山司)
■ 部員数が増えて競争意識が高まる
1963年に創立と同時に野球部が創部。
前身の静岡自動工業時代には、袴田英利(元ロッテ)、長嶋清幸(元広島他)といった名プレーヤーを輩出し、73年夏には県準優勝した実績を持つ。
近年は夏の大会で7年連続初戦敗退。
一時期は部員数が減り、苦しい時期もあった。
チームの指揮をとるのが大村文彦監督だ。
静岡西、日本体育大を経て、静岡北に赴任。
現場から離れた時期もあったが、2014年に監督として復帰した。
「私が復帰した当初の野球部の選手は大人しくて、学校の中でも存在感が薄かった。
いい意味で目立つことも必要だと思った」と、元気のいい挨拶をすることから始めた。
選手数は少しずつ増え、新チームは2学年合わせて18人。
必然的に部内でのレギュラー争いも激しくなり、実力を上げている。
環境面は決して恵まれていない。
グラウンドの外野奥は、サッカー部とソフトボール部が使用している関係で、限られたスペースでの活動になる。
フリーバッティングでは外野方面に打つことができず、バックネットに向かって打ち込む。
練習時間も3時間程度と定められている。
その中で、選手たちはテキパキと練習メニューをこなしていく。
チームのスローガンは「英姿颯爽(えいしさっそう)」。
何事もスピーディーに、キビキビと行動することを目指しているのだ。
■ いざ、8年ぶりの勝利へ
今夏は県大会初戦で静岡西と対戦した。
春の公式戦で名門・静岡を破っている難敵だった。
試合は3対2のリードで9回を迎える。
しかし、土壇場で同点とされると、10回表に1点を失い惜敗する。
敗れはしたものの、大村監督は選手を評価する。
「それまでは大差で負ける試合が多かったが、夏はゲームらしいゲームになった。
絶対に倒してやるという気持ちも出ていた」
だが、秋の新チームでは2連敗。
敗者復活戦では大量得点を許し、7回コールド負けを喫した。
高田隆乃助主将(2年=内野手)が振り返る。
「自分たちは波に乗った時はいいのですが、雰囲気の上がり下がりが激しくて。
やっぱり、点が入ると下がってしまうので、そこが課題になってくると思います」
大会後、取り組んでいるのは団結力を高めることだ。
チーム状態が悪くなった時に、いかに全員で声を出して、相手に立ち向かっていけるか。
そのために、練習最初のランニングから大きな声を出すことを心掛けるとともに、学年関係なく、言いあえる雰囲気を作っているという。
さらに、「これまでと同じことをやっても勝てない」と高田主将を中心に、自主練習の時間を増やしている。
徐々に、結果として現れている。
オフシーズを前に、今夏の県準優勝チーム・駿河総合と練習試合を行い、緊迫した展開に持ち込んだ。
エースの奥山晴斗(2年)が6失点にしのぎ、打線も相手の主力投手から得点を奪って善戦した。
8年ぶりの夏の大会勝利へ。
緊張感を高めながら、突き進む。
静岡北高等学校
【学校紹介】
住 所:静岡県静岡市葵区瀬名5-14-1
創 立:1963年
甲子園:なし
1963年に静岡県自動車工業高校として開校し、80年に静岡北高等学校に校名変更する。
2007年には文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定される。
学校法人静岡理工科大学のグループに属する。