今春から新体制で「戦う集団」へ。
全力、フルスイング、低送球
浜松市立は今春から磯部祐監督が指揮を執る。
コロナ禍でのスタートとなったが、選手たちは「潔」く、伝統を「繋」いでいく。
2020年8月号掲載
(取材・栗山司)
■ 闘将・磯部監督が就任
まもなく創立120周年を迎える浜松市立。
伝統と歴史を持つ浜松市内唯一の市立高校だ。
2005年に女子校から共学化。
野球部の創部は翌2006年。
初代監督の藤田裕光氏が土台を築き、創部2年目の夏に初勝利。
さらに2009年春には県ベスト4に進出した。
その後、2代目の水谷裕士氏が引き継ぎ、2015年夏に県ベスト8へ。
西部地区では常に上位に顔を出す新鋭となった。
今春からチームを率いるのが磯部祐監督。
春野、浜松湖南で監督を歴任し、2017年から浜松市立の部長としてチームを支えてきた。
1976年の選抜で浜松商を全国優勝に導いた修三氏を父に持つ磯部監督。
熱さと緻密さを兼ね備えた指導には定評がある。
就任早々、新型コロナウイルスの影響で、練習ができない日々が続いた。
部活動が再開したのが6月1日。
1時間程度の軽い練習からスタートした。
そんな中でもノックの際には「エラーするのはいいから思い切りやろう」と熱量たっぷりに指導。
「闘う集団を作り上げる」と気持ちを高ぶらせる。
■ 凡事徹底の気持ちで
グラウンドは学校から車で30分ほど離れた場所にあるものの、両翼96メートル中堅110メートルの専用球場。
施設面は申し分ない。ただし、浜松市内有数の進学校だけに、練習時間は限られる。
磯部監督は「短い中でいかに緊張感を持ってできるかがポイントになる」と語る。
指揮官が伝えていることは、いたってシンプルだ。
「潔(いさぎよ)くやろうぜ」。そこにはこんな思いがある。
「練習から全てを出し切る。その上で夏の大会で負けたときに『ここまでやってきた俺らに勝ったんだから、君たちはすごい』と相手を称えられるような潔いチームにしていきたい」
技術的にも、徹底するポイントは3つだけ。
走ることは審判のジャッジが出るまで全力。
打つことは膝から上を全部フルスイング。
守りは低いボールを送球。
磯部監督は「強いチームはこの3つが徹底されている。
凡事徹底の気持ちで取り組みたい」と抱負を語る。
■ 思いを後輩に繋げる
昨秋の西部大会では聖隷クリストファー、磐田東の私学勢の前に敗退。
あと一歩で県大会を逃した浜松市立ナインは「春こそ県大会へ」と、冬の期間は毎日、1200gのバットを最低600スイングしてきた。
しかし、春の大会は中止となった。片山啓人主将(3年=外野手)は「春に懸けてきたので悔しかったのですが、まだ夏はあると全員で切り替えてきた」と振り返る。
4月からの休校期間中は各自でトレーニングを行い、夏に備えてきた。
だが、夏の選手権大会も中止に。
それでも練習再開後、3年生7人を中心に「潔く終わろう」と、代替大会に向けて全力プレーに徹する。
チームには一つのスローガンがある。
「繋ぐ」。
片山主将は「僕たちの思いを背負って来年は絶対に甲子園に行ってほしい」と、「潔さ」の精神を後輩に繋ぐ―。
浜松市立高等学校
【学校紹介】
住 所:静岡県浜松市中区広沢一丁目21-1
創 立:1901年
甲子園:なし
浜松市唯一の市立高校。1901年に浜松高等女学校として創立。1948年に浜松市立と改称。2005年より男女共学となり、翌年に野球部が誕生した。文武両道の教育方針のもと、昨年は国公立大に181名が合格、部活動では12部、1個人が全国大会に出場した。