コロナ禍で創意工夫するチーム
石黒監督が「YouTube」で発信
2020年夏の独自東東京大会でベスト4となった大森学園。コロナ禍で練習制限を受けたが、選手たちは前向きな姿勢で野球に向き合っている。
■ポテンシャルの高いチーム
2020年夏の独自東東京大会で進撃をみせてベスト4という結果を残した大森学園。準々決勝では優勝候補・二松学舎大附を撃破するなど、下町パワーを存分に発揮して旋風を起こしてみせた。今年の3年生は、あの夏をスタンドで観戦した選手たち。さらに、夏ベスト4を見て入学して来た新2年生は40人。3年生18人、2年生40人のチームは、先輩たちが残してくれた結果を糧に悲願の甲子園出場を目指す。選抜出場を視野に入れて始動した昨秋は都大会初戦で駒大高と対戦。シーソーゲームの末に8対10で屈した。5回を終えて3対8と劣勢だったところを、6、7回の猛攻で同点に追いついたが、最後に力尽きた。チームには大きなポテンシャルが秘められていたが、それを発揮する前に大会を去ることになった。
■指揮官が動画で技術指導
再起をかけたチームだったが、この冬はコロナ禍によって練習が制限された。感染拡大防止の一環で、大森学園はオンライン授業へ移行したため、全員が揃うことが難しくなった。1月中旬からは1カ月間の活動停止。石黒隼監督は野球ノートアプリを活用し情報共有すると共に、自らが“YouTuber”となって技術指導の動画を選手たちに配信していった。現役時代、東海大菅生で主砲として選抜出場を果たした経験を持つ石黒監督は「最初は言葉で伝えていたが、打撃をすべて言葉で説明するのは難しい。実際に自分がスイングをしながらポイントを解説するようにした」と話す。選手たちは、指揮官の動画を見ながらそれぞれが打撃向上につなげた。指揮官は「自分自身の指導を見直すきっかけにもなった」と振り返る。
■結果で感謝を伝えたい
春・夏へ挑むチームは、東東京屈指の強打者・山崎祥貴(3年=外野手)を絶対的な軸に進化を遂げている。2年生エース湯川翔太は秋以降に最速136キロをマーク、春・夏は140キロ超も期待できる。2年生の木下蘭亜、木倉悌の二遊間コンビも安定し、攻守の土台は整い始めた。今年のチームのスローガンは「万事前心」。困難な状況でも常に前向きに野球、学校生活に取り組んでいくことを目指す。「前進」ではなく「前心」にしたのは、心の成長も重視したから。島田颯大主将(3年=内野手)は「コロナ禍を言い訳にせずにポジティブな気持ちで野球に取り組んでいる。そのためには心の成長が大切。応援してくれる人たちに、自分たちのプレーと結果で感謝を伝えていきたい」と球春を待つ。大森学園は、逆境を力に変換して甲子園への道を切り拓く。