涙の決勝敗戦
勇猛果敢、初準優勝
相洋が、王者・東海大相模を土俵際まで追い詰めながらも屈した。
決勝戦で敗れたが、大会を通じてみせた勇猛果敢な戦いは、次世代への財産となる。
2020年10月号掲載
■東海大相模への挑戦状
準決勝では星槎国際湘南に追い上げられながらも9対6で逃げ切り、夏大会の初決勝進出を決めた。
決勝の相手は、これまで何度も跳ね返されてきた東海大相模。
昨秋大会では準決勝で対戦して、終盤までなんとか食らいついたが8回に一挙6点を奪われて1対12の8回コールドで屈していた。
あれから約10カ月。
高橋伸明監督は「何度も打ちのめされてきた相手。どれだけ戦えるか楽しみ。選手たちを信じている」と、決勝へ向かった。
それは東海大相模への挑戦状だった。
■主将の一撃で王者を突き放す
相洋は、東海大相模相手に真っ向勝負を演じた。
決勝戦の先発は、左腕吉川宗吾(3年)。
変化球を低めに投げ分ける技巧派は、強力打線に的を絞らせない投球でゲームを作っていく。
2回には、8番・二宮巧磨(2年=内野手)のタイムリーで2点を先取、ゲームの主導権を奪う。
4回、吉川が同点2ランを浴びて2対2となると、5回からは右腕・石井将吾(3年)をマウンドへ送り、早めの継投で勝負していく。
相洋は5回に1点を加えると、7回無死1塁から大黒柱・加藤陸久主将(3年=捕手)が高めのボールを振り抜き、レフトスタンドへ運ぶ。
5対2。絶対的プレーヤーのひと振りで、勝利をたぐり寄せたかにみえた。
■ゲーム終盤に野球の難しさ
魔の8回だった。2番手・石井が相手打線につかまり2死満塁のピンチとなると、指揮官はエース本田眞也(3年)を登板させる。
しかし、東海大相模の5番、6番に連打を浴びて、逆転されてしまう。
投手交代のタイミングなど極めて難解な判断ではあったが、東海大相模の打力が上回ったと言える。
相洋は9回にも3点を失い、5対9で敗れた。
7回裏の加藤の2ランで優勝の二文字が近づいたかにみえたが、野球の難しさを見せつけられた結果となった。
試合後、相洋の選手たちはベンチで崩れ落ちた。
敗戦の責任を感じたエース本田は、頭を上げることができず、仲間に抱えられるようにして立ち上がるのが精一杯だった。
その傍らには、この2年半、ともに戦ってきた加藤がいた。
加藤は「終盤に打たれたのは逃げずに勝負した結果。自分たちの力を出し切ったので悔いはない」と気丈に振る舞った。
泣くな、胸を張れ。
相洋はこの敗戦を糧にさらにたくましくなる。