【清水東 野球部】「自立」#清水東

今夏の代替大会ベスト16

自立し企画する伝統進学校

伝統進学校・清水東がじわじわと力を蓄えている。

今夏の代替大会では15年ぶりに16強に進出。「自立したチーム」を掲げる選手たちは、1977年春以来の聖地を目指す。(取材・栗山司)2020年12月号掲載

■15年ぶりのベスト16進出

今夏の代替大会で2005年以来となるベスト16入りを果たした。

3回戦では飛龍と対戦。ハイライトは2対2で迎えた6回だった。8本の単打を重ねる猛攻で一挙7点を奪った。

同校を率いるのは大代茂雄監督。静岡商などで指揮をとった経験を持つ指揮官は、県下有数の進学校の特性を生かそうと、選手主体の「自立したチーム」を目指している。

日々の練習時間は1時間半から2時間と極端に短い。練習メニューは選手たちで考え、そこに大代監督がアドバイスを加えていく。一般的な体作りや守備系を省き、打撃面に特化しているのが特徴だ。「守備は必ずそこに打球が飛ぶとは限らないが、バッティングはコールドにならない限り必ず27回打席が回ってくる。バッティングを向上させることが勝ちにつながると考えている」(大代監督)

さらに試合になれば基本的にサインはなく、選手間のアイコンタクトでゲームを動かす。前述の飛龍戦では鍛えてきた打撃力を発揮。ノーサイン野球でグラウンドを駆け巡った。

■企画力を高める

現チームは2年生12人、1年生12人で活動する。

「技術的には能力の高い選手が集まっている」と大代監督は話す。だが、秋は県大会への出場をあと一歩のところで逃した。島田商との中部大会2回戦。序盤に4点のリードを奪ったものの、ミスが絡んで逆転負けを喫した。

石垣快主将(2年=内野手)が振り返る。「エラーで同点にされて『いつも通りではない』と焦ってしまって。そこで気持ちの切り替えができませんでした。新しい気持ちでもう一回試合に集中することができれば良かったと思います」

悔しい敗戦から3カ月。チームは「企画力を高める」ことをテーマに掲げている。大代監督はその意図をこう説明する。「練習メニュー、戦術、チームカラー、環境整備など自分たちで企画を立てることで、より彼らの持っている考える力が発揮できると思っている」

なぜ今、この練習が必要なのか、チームに足りないものがどこなのか。トップダウン形式ではなく、選手の意見を尊重するボトムアップのスタイルが浸透している。

■3本の矢

チーム目標は甲子園で1勝すること。

カギを握るのが2年生の3投手だ。本格派として期待の金高祐津紀は130キロ台中盤のストレートを投げ込む。小沼俊輔は今夏4回戦(対駿河総合)で5回まで無安打に抑える好投。キレのあるストレートと曲がり幅の大きい変化球で抑える。リリーフで控えるのがサイドスローの杉山義樹。テンポ良く打たせて取る投球が身上だ。3人とも今夏の舞台を経験し、エースナンバー争いが熾烈を極める。

1977年春以来の聖地へ。石垣主将は「来年の夏は甲子園に出て練習時間が短くても勝てることを証明したいです」と宣言する。強固な投手陣、そして新しい発想で上昇を続ける。

 

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