【江戸川 野球部】「SJB」 #江戸川

セルフジャッジベースボール
ボトムアップ方式で自主性重視

江戸川は、コロナ禍に屈しない。自主性を重んじるチームはセルフジャッジベースボール(SJB)で高校野球界にセンセーションを起こす。

■サインは自分たちで決める

江戸川の主役は、選手たちだ。野球を真剣に楽しむチームは、自分たちでサインを出してプレーする「セルフジャッジベースボール(SJB)」を実践する。選手たちの意志によって昨秋の新チームから本格採用。バッターボックスに立った選手、塁上のランナーがコミュニケーションを図りながら、選手同士でサインを決めていく。そこに監督は“存在”しない。2020年春から江戸川を指揮する園山蔵人監督は「選手たちは、私の想像を越えたアイデアをみせてくれている。私自身が勉強になっています」と目を細める。

坂本智哉主将(3年=捕手)は「サインが決まったときの達成感は他では味わえないもの。自分たちで考えることがこんなに楽しいとは思わなかった」と手応えを話す。江戸川は、高校野球の常識を打ち破っていく。

■生徒たちと一緒に考える野球

SJB導入を決めた園山監督は、2020年春に江戸川に着任し、指導をしている。教員採用後、2度目の赴任先だった六郷工科(定時制)でバスケ部と軟式野球部監督を掛け持ちし共に都大会優勝の実績を持つ。その後は王子総合、四商で指導。昨年度の春に江戸川へやってきた。コロナ禍で休校中だったため、指揮官は、インターネットビデオシステムZOOMでのミーティングでオンライン自己紹介を行った。そして毎日グラウンドの整備をしながら学校再開を待った。部員とは初対面だったが、選手たちは登校日に黙々と草むしりをしている監督の姿を目の当たりにして垣根がなくなっていったという。江戸川での「セルフジャッジベースボール」のヒントは、六郷工科時代にあった。バスケ部と軟式野球部で、生徒たちと一緒に考えながら結果を残した経験が脳裏に焼きついていた。「江戸川で、ボトムアップ方式を取り入れてみたい」。

都立伝統校での挑戦が始まった。

■高校野球に革命

指揮官は、選手たちに答えを教えるのではなく、「なぜ?」「どうして?」「どうしたい?」「どうなりたい?」を問い続けた。

選手たちは自分たちで考えることで、ぐんぐんと成長を遂げていった。昨年の秋季一次予選では墨田工、広尾に競り勝って都大会出場。初戦で日大豊山に屈したが、私学強豪のレベルを肌で感じたことで、選手たちの意識も変わっていった。年末年始から3月下旬まではコロナ禍での自主トレが続いたが、選手たちは各自で考えながらトレーニングに励んだ。迎えた春都大会初戦では、本郷と対戦し、終盤で1対4とリードされる展開ながらも8回に一挙4点を奪い、ゲームをひっくり返すと6対5の逆転勝利。セルフジャッジベースボールでの勝利は、選手たちに大きな自信を植え付けた。園山監督は「生徒たちを指導者の枠に押し込めてはいけない。野球を通じて、選手たちに考えることの大切さを教えていきたい」と、次世代の野球を見据える。

高校野球の常識とは何か。江戸川は野球の常識を見つめ直すことで、高校野球に革命を起こす。その道は難解だが、挑戦する価値は十分にある。

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