【相模原】「あの夏を、再び」 #相模原

「打」のイメージに「投」・「走」・「心」を融合
秋初戦敗退の悔しさを胸に成長を誓う

 県立進学校ながら「打ち勝つ野球」で激戦区・神奈川で存在感を示してきた相模原。チーム一丸で夏4強入りした2019年の再現を目論む。(取材・三和直樹)

■5安打1得点での敗退  

“打撃の伝道師”佐相眞澄監督率いる県相の魅力は当然、バッティングにある。しかし、新チームとなって挑んだ今秋は地区予選突破後の県大会1回戦で日大高に1対4。相手の長身左腕を打ち崩せず、長打1本のみの5安打で敗れた。  

「1点しか取れなかった。逆方向へのバッティングに取り組んで練習試合では成果も出ていたんだけど、本番では空回りしてしまった。まだ身についていないということ」と佐相監督。「4番・キャッチャー」の佐藤航成主将(2年)も「力を発揮できなかった。経験があるピッチャー2人がいるので投手力は高いと思いますが、打力がまだまだ足りない」と反省。相手投手の好投、不運な形での失点、コロナ禍で夏合宿が中止となった影響などがあったとはいえ、自分たちの課題を再認識させられる試合となった。

■投打に多くの伸びしろあり  

打力不足を痛感して初戦敗退も、現チームの強みは多くある。特に投手陣。小林理瑛(2年)、近藤優樹(2年)の2人は、ともに身長180センチ超の大型右腕。昨年から投げていた経験もあり、球速アップによる今後の成長も期待できる。打線では、1番打者の前田明宏(2年=外野手)が「歴代の中でも一番かも」(佐相監督)という俊足の持ち主。「2番・ショート」の榎本大輔(2年)が攻守両面で働き、3番・近藤、4番・佐藤、5番・大塚真一郎(2年=内野手)が務めるクリーンアップは、まだ未完成ながら破壊力を秘めている。秋の敗戦を経て「もう一度、バッティングを作り直す」と佐相監督。創意工夫を凝らした練習メニューと、計画、実行、評価、改善を繰り返すPDCAサイクルの中で例年、冬を越える頃には「打てるチーム」になる。今年のチームも例外ではない。すでにスイングスピードを測る「BLAST」を有効活用しながら、新たに導入されたLED照明の下で日没後もバットを振り続ける日々。2年生だけで36人という競争力の高さも成長の糧になる。

■“快進撃”の再現へ向けて  

脳裏に焼き付いているのは、2019年夏の戦いだ。神奈川大会3連覇を目指していた横浜と準々決勝で対戦した県相は、0対5から終盤2イニングで8得点を奪っての逆転勝利(8対6)で4強進出。現在の2年生たちは当時、中学2年生。「あの試合を見て県相に行きたいと思った」という面々が多く、快進撃のイメージは出来上がっている。  

その中で佐相監督は「投手陣は楽しみだし、足を使えるのは例年と違うところ。何より、今年のチームは元気があって、声を出せる。嫌なことでもお互い言い合える。そこが今後の強みになる」と現チームを見つめる。そして「最後に必要なのは“心”の部分。大会本番のプレッシャーの中で、どうやって自分の力を発揮できるか」と力を込める。コロナ禍の影響をより多く受ける公立校という環境下で、この2年は大会での早期敗退が続いた。その苦難の日々からの“脱出”を宣言するためにも、再び上位進出を果たすつもり。現チームの特徴である「投」と「走」に伝統の「打」を加え、「心」を鍛えて本番へ。県相ナインの成長は、ここから始まる。

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