【星槎国際湘南】 「夢は叶えるもの」 #星槎国際湘南

我慢と努力の2年半
“必笑野球”を貫いた先にあるもの

 “名将”土屋恵三郎監督が率いる星槎国際湘南。コロナ禍が続いた今年のチームも元気ハツラツに最後の夏を迎えた。(取材・三和直樹)

■成長した姿を親に見せる  

コロナ禍の中で過ごした2年半は、中止、禁止、規制、制限の連続だった。それでも今夏、スタンドには多くの観客が訪れ、歓声に包まれた中でグラウンドに立つことができる。合言葉の“必笑野球”は不変。指導者として節目の40年目を迎えた土屋恵三郎監督は、苦労の末に高校生活最後の舞台が整ったことに安堵の笑みを浮かべる。  

「毎年、新入生たちはいろんな夢や希望を持って入って来るけど、今の3年生たちは我慢だらけの2年半だった。でも、ようやくだけどコロナの制限が少しずつ解かれてきた。何より、お父さんお母さんに自分たちがプレーしている姿を見せられるようになったことがありがたいね。成長した自分の姿を親に見せることができる。それが一番だよ。本当に良かった」  グラウンドでの練習が禁止になった時期は各自が自主トレに励み、全寮制の中で感染予防に気を配りながら生活し、可能な限り、何度も話し合った。つらい時期もあったが、上級生たちが下級生を支え、同学年の仲間同士でも励まし合った。「チーム全員が同じ屋根の下で生活して、そこで培ってきた団結力はどこにも負けません」と岡村洸成主将(3年=内野手)。常に我慢を強いられた日々の中で、部員たちは絆を深め、たくましさを身に付けた。

■秋の敗戦を糧に強くなった

昨夏は4回戦で敗退。新チームとなって迎えた秋も4回戦まで勝ち上がったが、東海大相模の前に0対20(5回コールド)の大敗を喫した。だが、「あの敗戦から這い上がってきた」と土屋監督は振り返る。冬、春に鍛錬を積み、確かな自信を手に最後の夏へ挑んだ。  チームの看板は2人の本格派右腕。矢ヶ崎亮太(3年)が「常日頃から“オーラを感じる男になれ”と監督に言われてきて、自分自身も精神面ですごく成長できました。学費や寮費を出してくれた両親にも感謝したい」と頭を下げれば、制球力とともに中学時代の最速129キロから146キロまで球速をアップさせた松下主孟(3年)も「苦しいことがあっても仲間がいたから乗り越えることができた。大学で自分の力を磨いて、将来的にはプロで活躍できる投手になりたい」と力強く続ける。

■「全員が家族同然」

数々の名選手を育て上げてきた土屋監督の下には毎年、夢を抱えた少年たちが次々とやって来る。決してエリートではない。中学時代は控え野手や2番手、3番手の投手がほとんどで、ひとり親の家庭環境で育った部員も多い。だが、「うちは全員が家族同然」と土屋監督。父のように温かく見守ると同時に、「夢は叶えるものだぞ」と“子どもたち”の背中を押す。  

土屋監督は改めて言う。「今の3年生たちは精神的にも絶対に強くなっている。コロナ禍で過ごした2年半の経験は、今後の人生に必ず役立つ。自分の夢を叶えるためのパワーになる」。“必笑野球”を貫いた中で、幼かった少年たちは逞しく成長した。自身の可能性を大きく広げた男たちは、自らの人生を切り拓くため、新たな挑戦の舞台に立つ。

 

 

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