2022年夏・秋に2大会連続ベスト32
ブレイク予感の県立ダークホース
2009年に、港南台高と上郷高が併合して開校となった横浜栄。チームの土台を築くべく地力を蓄えている野球部は今夏・秋に2大会連続でベスト32進出を果たすなど成果が出始めている。
■創立14年目に変化の胎動
港南台高と上郷高が統合して生まれた横浜栄。最近は目立った結果を残すことがなかなか出来なかった野球部だが創立14年目に変化の胎動が結果として表れている。今夏の神奈川大会では1回戦で実力校・横浜清陵に3対1の9回逆転勝利を収めた。3回戦では公立名門・相模原と対戦して、4投手の継投によって9回まで0対0のスコアレス。緊迫した状況で幾度かのピンチを乗り切ったチームは、延長10回に2点を奪って2対0で執念の勝利。チーム一丸でつかんだベスト32進出だった。横浜清陵戦、相模原戦で好投した2年生186センチ右腕・山本絃太(2年)は「大会では持っている力以上のものが発揮できました。一つの結果を残せたことはチームの自信になります」と振り返る。
■選手たちが成長していく「ラボ」
山の丘陵を活かした立体的な構造の校舎を抜けると、木々に囲まれたグラウンドが広がっている。そこが、横浜栄の選手たちが成長していく「ラボ」となっている。チームに新たなエッセンスを加えているのは、2020年に着任した坂元裕貴監督だ。高校時代は横浜商で主将を務めた経験を持ち、横浜国大へ進学。大学時代は、岸根高の学生コーチとして高校野球に携わり、神奈川県教員の道へ。上矢部で5年間指導したのちに横浜栄へやってきた。異動直後はコロナ禍初期だったこともあり、野球部としての型が出来ていなかったが、練習メニューと環境を整備していくと、選手たちが輝き始めた。坂元監督は「横浜栄には、真面目に、ひたむきに練習へ取り組める選手たちが集まっています。背中を押してあげることによって、主体的に動けるようになっていきました」と変化を話す。
■チーム全員の成長がチームの進化
坂元監督が目指す道は、「正しい野球」だ。野球を取り巻く環境は変わっていくが、野球の本質自体は変わらない。スター選手のいない公立チームが、いかに格上を倒すか。生徒の探求心を刺激しながら、野球の魅力、奥深さを伝えている。ときには勝敗や損得ではなく、人として野球人としての正しい道を啓示している。夏大会後に始動した新チームは、浅野将寿主将(2年=外野手・投手)を軸にスタート。秋季県大会1回戦で東、2回戦で藤沢清流に勝利し、2大会連続で32強進出を果たした。同大会では、9番・今岡岬(2年=右翼手)が8打数6安打と活躍。若き指揮官は、陰で努力した選手が結果を残す姿に、あらためて野球指導への“やりがい”を感じたという。3回戦では相洋に屈したが、次なる壁がハッキリと見えてきた。浅野主将は「横浜栄では野球の面白さを教えてもらっています。チーム全員で成長することによって春・夏にベスト16以上の結果をつかみたい」と前を向く。横浜栄の選手たちはさらなる高みへたどり着くため、翼を広げていく。