東京タワーの隣から甲子園への挑戦
2021年夏の東東京大会でベスト8
東京タワーの“お膝元”に位置する伝統進学校・芝。「自律自立」を部訓とするチームは2021年夏の東東京大会でベスト8進出を果たしている。選手たちは、熱く野球に向き合っている。
■東京タワーの灯りに照らされて
学校校庭から東京タワーを見上げることができる。芝公園の隣に位置する芝は、日々、東京タワーの迫力に負けじと練習に励む。日が暮れると、東京タワーの灯りがグラウンドを照らすという。 選手たちは授業を終えるとユニホームに着替えて、次々とグラウンドへ飛び出してくる。限られた時間を有効に使うため移動は全力疾走、その姿から、部員たちの本気の姿勢が伝わってくる。グラウンド入口にはホワイトボードが置かれていて、一般生徒たちが野球の結果、練習内容などを把握することができる。これも愛される野球部への取り組みの一つだ。中高一貫校で、中学野球は「芝シニア」としてリトルシニア(硬式)に参加。中学から硬式ボールに慣れていることと、6年間で培う一体感が芝の強みとなっている。
■2021年夏8強、2022年夏32強
2021年夏の東東京大会で進撃をみせた。当時のエース尾藤成(現在慶応大)の好投によって勝ち上がったチームは4回戦で日大目黒、5回戦で日大一に勝利し準々決勝へ進出してみせた。江戸川球場には多くの生徒が駆けつけてスタンドを埋めた。関東一戦には敗れて8強で夏を終えたが、堂々たる戦いをみせた。チームは昨夏も4回戦へ進出して実力を誇示。今季のチームも新たな歴史を刻むべく自分自身と向き合っている。部訓は「自律自立」。増田宣男監督は「野球というスポーツを通じて、自分を律することで成長してほしい」と願う。チームは規律を保ちながら、その中で選手たちが自発的に行動。練習準備などの雑用は、上級生が率先的に行う。それが芝の伝統を築いてきた。
■ベスト8を超えてベスト4以上へ
今年のチームは、昨秋の1次予選初戦で東海大菅生と対戦して0対12で敗れた。渡辺一輝主将(3年=内野手)を大黒柱にして経験値の高い選手たちが揃っていたが、王者相手に何もできずに終わった。予選対戦相手については不運とも言えるが、芝の選手たちは「自分たちの力不足」と受け止めて春・夏の巻き返しを誓う。選手たちは冬のトレーニングを乗り越えて、ひと回り成長した。エース左腕・琴野勇祐(3年)は下半身が安定したことでキレが増し、実戦へスタンバイ。藤本駿太郎(3年=外野手)、岸本遥斗(2年=内野手)の主軸も飛距離を伸ばす。打撃でも主軸に座るエース左腕・琴野が「自分がしっかりとゲームを作って、打線で打ち勝つチームになっていきたい」と話せば、渡辺主将は「先輩たちのベスト8を超えてベスト4以上を狙っていく」と力を込める。芝の選手たちはグラウンドで「自律自立」の部訓を体現することで結果を追求していく。伝統は守るものではなく、磨き上げていくものだ。