【知徳】  「燃える冬」

注目投手・小船翼を中心に勝てるチームを模索
あらゆる角度からトレーニングを実施し自信につなげる

一人の逸材がいるだけでは、勝つことはできない。チームスポーツとしての野球に改めて向き合った知徳が、春へ向け“燃えて”いる。(取材・栗山司)

■燃える冬を乗り越えて

今年の静岡県内でナンバーワン投手の呼び声が高い小船翼(2年)。197センチの長身から最速150キロを計測する逸材に注目が集まっている。  その小船を擁しながら、昨秋は勝ち切ることができなかった。県大会は初戦で常葉大橘と対戦。2点を先制するも、3、4回に内野ゴロの間に1点ずつ失い、7回にも内野ゴロ2本で勝ち越しを許した。3対4で敗戦。主将の松本陣(2年=内野手)は「小船一人に背負わせてしまいました」と反省する。試合が終わると、「これだけいいピッチャーがいて、なぜ勝てなかったのか」を全員で話し合った。「野手の力不足があったと思います。一人ひとり、力がないんだぞということを自覚して、練習から『やるしかないぞ』という前向きな言葉をかけて、自分たちを燃え上がらせてきました」  冬のテーマは「燃える冬」。これは、松本の野球ノートに書かれていた意気込みを初鹿文彦監督が拾い上げ、今のチームにベストな一言だということで採用となった。さらに「その壁を越えろ」という言葉も付け加えられた。

■新たな取り組みでレベルアップ

まさしく燃える冬となっている。毎年恒例の山梨県・塩山でのランニングは計36キロに及び、別の日には山中湖を2周した。「どんなに苦しくても歩かない。走り抜こう」と決め、全員がやり遂げた。松本は「あれだけ苦しいことをやってきたんだから、これ以上怖いことはない。自信を持つことができました」と胸を張る。  今年は「色んな人の“血”を入れていきたい」という初鹿監督の考えで、新鮮な空気も入っている。インストラクターを招いてのヨガトレーニングもその一つ。「集中を高める呼吸法を実践することで自分と会話する大事さを知りました。ヨガは確実に野球に生きてくると思います」(松本)。また、昨年4月からは専門のトレーナーが入り、基礎体力向上の手助けをしている。初鹿監督は言う。「選手たちにたくさんの出会いがあればと思っている。色んな人と接することで、コミュニケーション能力を養ってもらいたい」

■スリーピースに込められた思い

知徳には「日本一の人柄野球で全国制覇」という大きなスローガンがある。「技術3割、人間性7割」が合言葉。初鹿監督は「人柄だけは忘れてほしくない」と熱く語り、選手たちはその象徴として3本の指に思いを表す。親指は感謝の心、人差し指は思いやりの心、中指は素直な心。愛されて勝つことを目指す知徳の春がまもなくやってくる。

 

 

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