2022、2023年夏に2年連続32強進出
「新宿」から「遥かなる甲子園」へ

伝統校・新宿が地力を蓄えている。2022、2023年夏に2年連続4回戦へ進出したチームは、甲子園という目標を掲げて静かな闘志を燃やす。

■2022年11月には、イチロー氏が指導

伝統校に復活の予感が漂っている。2017年秋の新チーム始動時には、部員が12人になってしまった。学校は新宿駅から徒歩5分。ダイヤモンド(内野)ほどの広さの校庭で練習メニューは限られる。部員が減少すれば単独出場が危ぶまれる状況だったが、2018年春に10人の1年生が加入し襷(たすき)はつながった。当時の田久保裕之監督(現助監督=新宿OB)は、小学生を対象にした野球教室などを実施し、野球の魅力を伝えると共にチーム強化に励んだ。そして2022、2023年夏に2年連続4回戦へ進出。2022年11月には、イチロー氏が新宿野球部を訪問し特別指導を行った。田久保助監督は「部員が少ないときに頑張ってくれた生徒たちがいたから今がある」と振り返る。伝統の襷をつないだチームは、再び進撃態勢を整えている。

■OB二人三脚の指導体制

新宿は2023年夏大会後から、長井正徳監督となった。新宿OBで田久保助監督の先輩にあたる。いまは長井監督、田久保助監督のOB二人三脚の指導体制となっている。長井監督は日体大時代から、新宿で学生コーチを務めて後輩たちと汗を流した。教員採用後には、特別支援や定時制で勤務する傍ら、息子たちが所属する少年野球チームをボランティア指導。2019年春に新宿へ着任し、2023年東東京大会後の7月下旬から監督となった。高校野球で初めて指揮する長井監督は「母校で指導できることは感慨深い。練習をやらせるのではなく、どうすれば勝てるのかを生徒たちと一緒に考えながら野球を楽しんでいます」と生徒に向き合う。今夏は指揮官としての「夏初陣」となる。

■伝統を継承しながら結果を追求

 今年のチームは、中川翔太主将(3年=捕手)、加藤康祐(3年=内野手)、綿貫拓己(3年=外野手)らを軸に一つになっている。エースは1年夏からマウンドに立つ都立屈指の好投手・生田琉晟(2年)だ。生田は小学生時代に新宿の野球教室に参加し、その縁もあり新宿の門を叩いた。部員難時代に蒔いたタネが結実していると言える。2年連続で夏ベスト32となった新宿だが、昨秋は予選で桐朋に屈した。今春は1回戦で日比谷に勝利し2回戦へ。国士舘に挑んだが0対7で跳ね返された。新宿は2022、2023年夏に2年連続で32強へ進出したが、4回戦でいずれも共栄学園に敗れている。私学の壁を越えれば次の景色が見えてくる。中川主将は「全員の力を合わせることが勝利につながっていく。伝統と一体感を武器に甲子園を狙っていきたい」と夏へ向かう。伝統を継承しながら結果を追求するチームは、新宿の地から甲子園を狙っていく。

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