2度の甲子園出場を誇る伝統校
今夏に優勝候補筆頭を破る大金星
過去に2度の甲子園出場がある伝統校・鹿沼商工が、今夏の栃木大会2回戦で第1シード白鷗大足利を撃破した。大金星を挙げた県立校のテーマは「執念」だった。
■今夏は白鷗大足利に劇的勝利
鹿沼商工が今夏の2回戦で白鷗大足利と対戦した。相手は、プロ注目選手を揃えて春の県大会、そして関東大会を制覇した優勝候補筆頭。下馬評は白鷗大足利優位だったが、中村裕監督は勝機があると考えていた。鹿沼商工は1回戦・佐野松桜戦で、左腕・吉原啓太(2年)を温存し2回戦で先発させた。左腕・吉原は6回2失点でゲームを作った。0対2で迎えた試合中盤の円陣で中村監督は「接戦で満足するな。勝ちに行くぞ」と選手たちに伝えた。6回に1点を返すと、8回に同点へ追いつき2対2で延長タイブレークへ突入した。継投策に入った終盤は、相手の強力左打者陣を計4度申告敬遠しピンチをしのいだ。そして延長10回裏に執念で1点をもぎとって、3対2のサヨナラ勝利を収めた。
■「執念キャッチボール」が勝利の鍵
中村監督は今春に栃木翔南から鹿沼商工へ異動となり、伝統校の指揮を任された。選手たちに植えつけたのは「執念」。日々の練習では、ショートバウンドなど敢えて悪送球を送っていく「執念キャッチボール」に取り組んだ。指揮官は「試合では必ず悪送球のシーンがある。普段から“汚いボール”の練習をしておけば、いざというときに対応できる。野球だけではなく人生も綺麗な状況だけではない。選手たちには逆境に負けない人間になってほしい」と説く。真岡工、小山南、栃木翔南で20年以上采配を執った中村監督は、失敗の連続だったという。そして「大会で私学強豪を倒すには、監督自身が“守りに入って”はいけない。白鷗大足利戦では、積極的は采配を選手が理解し勝利へつなげてくれた」と大金星を振り返った。
■2027年度には鹿沼南と統合
新チームは、夏の大舞台を経験した左腕・吉原、江田春稀(2年=内野手・投手)、武藤煌諄主将(2年=内野手)がそのまま残って、センターラインが確立されている。秋大会では1回戦で真岡工、2回戦で茂木に勝利。3回戦では作新学院に2対7で屈したが、最後まで食らいついていった。武藤主将は「夏に第1シードを倒したことは自信になる。夏の勝利を糧に、自分たちの代でベスト8以上を狙っていく」と力を込める。鹿沼商工は2027年度に、鹿沼南と統合し新たな学校になることが発表されている。鹿沼商工の校名で戦うのはあと2年。選手たちはさらなる勝利によって歴史をつないでいく。