
OB監督が率いる伝統の文武両道チーム
少数精鋭ながら勝利への道を地道に探る
OBの齋藤孝之監督就任から2年。昨秋は無事に県大会出場を果たし良好なスタートを切ったチームは、次の1勝のためにトレーニングを積んでいる。(取材・栗山司)
■量より質を追求
文武両道を掲げる清水東。県下有数の進学校として名を馳せる。野球部は過去4度の甲子園出場。現在、阪神タイガースの中継ぎとして活躍する岩崎優ら、プロ野球選手も輩出している。
環境は決して恵まれていない。雨天練習場などが老朽化のために取り壊され、グランドもサッカー部との共用でフルに使用できる日は少ない。練習時間も限られ、平日は2時間半程度。終了後は学習塾に通っている選手も多いという。
取材日はチームの指揮をとる齋藤監督が校内の会議のため、開始直後は不在。その中でも主将の吉添泰智(2年=捕手&内野手)を中心に黙々と基礎練習をこなす姿があった。
守備、打撃、トレーニングの3つの班に分かれて順番に回していく。守備の練習ではマネージャーが緩いボールを手で投げ、選手は捕球姿勢や体の切り替えを意識して動きながら捕球していく。「いかに短時間で集中できるかにこだわっています」と吉添は言う。「上手くなりたい」という主体性が垣間見える。
■粘り強く勝って県大会へ
齋藤監督は同校OB。筑波大、JR九州でプレーし、その後、教員となって、2023年4月に母校に着任した。
就任後、部員数減少に苦しみながら、簡単に負けない粘り強いチームを作り上げている。
昨年夏は2勝を挙げて3回戦に進出。3回戦では加藤学園にコールド負けを喫したものの、「ここに来ないと見えないものがある」と、その経験は次チームに受け継がれた。
選手18人でスタートした昨秋の新チーム。県予選の初戦で島田をタイブレークの末に下すと、敗者復活戦では序盤に畳みかけて県切符を掴みとった。
立役者の一人となったのがエースの疋田岳土(2年)。高校入学後、本格的に投手となり、フォームは珍しいアンダースローだ。独特な球筋に加え、間の使い方や駆け引きといった投球術にも長ける。しかし、県大会では本来の投球ができず、5回途中で降板。「緊張があったのかもしれません」と悔しがり、冬場の練習に力が入る。一方、野手のキープレーヤーは1年春から公式戦に出場する兼光大翔(2年=内野手)。「富士シニア」時代にはジャイアンツカップ出場経験を持つ。昨年秋のシーズンは2番打者として、練習試合、公式戦ともにチーム内で打率トップ。打撃は広角に弾き返し、守備は堅実なプレーに徹する。
■私学の壁を乗り越える
今春は「県1勝」が目標となる。自分たちのエラーで崩れて負けてしまった昨秋県大会のリベンジを果たし、その先の夏ベスト8進出を見据える。「ベスト8に行くために私学を倒さないといけないと思っています。その壁を破りたいです」と吉添主将。伝統校復活に向け、着々と歩を進める。