【星槎国際湘南 野球部】「必笑野球」

練習で泣き、試合で笑う。

名将率いるハングリー集団が聖地を目指す

激戦区神奈川において急速に存在感を高め、着実な成果を出している星槎国際湘南。

その成長の道程には、名将の情熱あふれる指導がある。

(取材・三和直樹)

■ 就任5年で2度の県4強入り

桐蔭学園で春夏通算10度の甲子園出場を果たした名将・土屋恵三郎監督には、「オーラを感じる男になれ」という座右の銘がある。

そして「そのためには、明るさ、やる気、我慢強さを持つこと」と言い続けている。

その指導方針のもと、星槎国際湘南の監督に就任したのは2015年1月のこと。

チームはそこから力を伸ばし、2016年秋も県ベスト8、さらに2017年春にベスト4進出を果たすと、2018年夏にも南神奈川大会で4強入り。

横浜と8対9の激戦を繰り広げるなど、強豪私学と互角に渡り合った。

新興勢力であるが、決してエリート集団ではない。

「うちのチームは中学の時には無名だった選手ばかり。

A、B、Cに分けるならBの下。

そういう子たちを伸ばしたい。

どんな子にも特徴があるし、可能性がある」と土屋監督は言う。

野球部は全寮制。

規律ある生活で土台を作り、同じ釜の飯を食いながら団結力とハングリー精神を養う。

2017年には専用練習場も完成。

練習から常に全力プレーを貫き、グラウンドには元気いっぱいの声が飛び交う。

■ 全身全霊を傾ける

“元気ハツラツ”の星槎野球を作り上げたのは、紛れもなく土屋監督である。

「俺が寮に入ると全部を管理してしまうから」と敢えて距離を取って隣町に住まいを構える。

練習が終わって帰宅するのは夜7時頃。

食事の後、1時間以上かけて部員全員の生活日誌を読み、コメントを書き込むのが日課。

10時前後には就寝するが、早朝4時には起床し、5時過ぎには高飛寮に到着して部員たちの朝練を見守る。

11月に66歳の誕生日を迎え、「神奈川の最年長監督。

あっという間にこんな歳になった」と苦笑いしつつも、「まだまだ情熱は持っているし、体が続く限りは部員達と一緒に頑張りたい。

部員達に毎日会うのが楽しみ」と若々しい。

今でも手取り足取りの熱血指導を続け、グラウンドによく通る声は“得意のカラオケ”の賜物。

普段から生徒たちと言葉を交わし、冗談も言い合いながら絆を深める。

「優しくて明るくて厳しい監督。

基本からしっかりと教えてくれる」とは濱田琉大主将(2年)。

還暦を過ぎてから新たな土地で、新たな挑戦を始めた土屋監督は、「必笑というのがうちのテーマ。

元気があるのが一番。

練習も暗かったらダメ。

常に明るく、元気にプレーしてもらいたい。

そのためには指導者がまず明るくなくちゃいけない」と言葉を強める。

■ 「もう一つ、階段をのぼれる」

星槎国際湘南野球部としては2020年で節目の創部10年目を迎える。

新チームは秋3回戦で敗退したが、1年夏から公式戦に登板する経験豊富なエース・三浦舞秋(2年)に、セカンドを守る濱田主将、さらに「1番・センター」として俊足巧打が魅力の茂木陸(2年)、チーム一の元気印である堀越颯太(2年)と前年のレギュラー陣が残り、ここからの成長が楽しみなメンバーが揃っている。

目標は、過去最高成績を塗り替えること。

「年々、しっかりとした形になってきている。

去年はベスト4。

またもう一つ、階段をのぼれると思う。

投手陣が自分たちの力を発揮して、野手陣がしっかりと繋ぐ野球をできるようにしたい」と土屋監督は期待を寄せる。

その言葉に部員たちも、「この冬にしっかりと鍛えて、絶対に監督を甲子園に連れて行きたい」(茂木)、「自分たちが甲子園初出場の代になりたい。

そのイメージはできています」(堀越)、と自信と自覚を持って応える。

湘南の地で育まれている星槎野球は、着実に聖地・甲子園へと歩みを進めている。

その足跡を確かめながら、彼らは今日もバットを振り、白球を追う。


星槎国際高等学校湘南

【学校紹介】
住 所:神奈川県中郡大磯町国府本郷1805-2
創 立:2009年
甲子園:なし
北海道の本部を含めて全国に23のキャンパス、学習センターを持つ広域通信制高校の中の一つ。

野球部は2011年創部。

スポーツ専攻コースがあり、女子サッカー部が2019年に全国初優勝。

女子バレー、陸上などがすでに関東、全国レベルで結果を残している。

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