
前橋商・住吉監督が前年度で“勇退”
春夏通算3度の甲子園出場の指揮官
高崎商、前橋商で指揮を執り春夏通算3度の甲子園出場を果たした前橋商・住吉信篤監督が、2024年度でユニホームを脱ぎ指導人生を終えた。新年度からは桐生市商定時制の教頭となった。
■最後のノック
前橋商・住吉監督が2024年度末で野球指導の道に別れを告げた。2025年度から桐生市商定時制への異動に伴い、前橋商を離れる。異動先の桐生市商では教頭として学校運営に専念する。
昨年度末の3月31日が前橋商での「最後の練習」となった。新井之久責任教師のはからいによって「MAESHO」の公式戦ユニホームを着た住吉監督は、2、3年生にノックを打ち込んで「前商魂」を選手たちに伝えていった。高校野球指導歴30年の指揮官は笑顔でノックバットを持ち、一球一球を楽しむかのように打球を放った。選手たちは、愛情のこもったボールに食らいつき、全員で声を出しながら盛り上げた。
■「心ひとつに全員野球」
1974年群馬県生まれ。東野威元監督の野球に憧れて前橋商に入学。大学卒業後に県教員となり前橋商、高崎商コーチを経て高崎商監督就任。2006、2009年に選抜出場を果たしている。2012年4月から母校・前橋商監督となり、2019年の新グラウンド完成にも立ち会った。そして2023年夏には前橋商を13年ぶりの甲子園出場へ導いた。私学すう勢の状況での快挙だった。近年は井上温大(巨人)、清水大暉(日本ハム)のプロ選手を育て上げた。スローガンは「心ひとつに全員野球」。レギュラー、控えに関係なく、全員で戦うことの意味を伝えた。最後のノックを終えた指揮官は「野球を通じて社会で活躍できる人材を育ててきた。野球は失敗の多いスポーツだが、失敗から何を学ぶかが大切。自分を犠牲にしてチームのためにプレーする精神を忘れないでもらいたい。前商野球部の生徒として社会に出てからも、人のために行動できるようになってほしい」と選手たちにメッセージを送った。
■住吉監督の思いを継承し新たな一歩
新年度からはOBの冨田裕紀コーチが監督に就任しチームを引き継ぐ。冨田新監督は「住吉先生と一緒に指導した3年間は貴重な時間だった。2023年夏に甲子園に連れていってもらったことは一生の財産。住吉先生の思いを引き継いでグラウンドに立ちたい」と引き締めた。小板橋快斗主将(3年)は「住吉監督のもとで野球を学びたくて前商を選んだ。1年生だった2023年には甲子園に連れていってもらって勇気をもらった。最後まで住吉監督と一緒に戦いたかったが、冨田先生のもとで甲子園に行くことを(住吉監督と)約束した。今年の夏は住吉先生を甲子園に招待したい」と恩師への思いを言葉にした。監督が変わっても前橋商の伝統は普遍。前商魂を宿した選手たちは、心ひとつに甲子園を目指す。



